100年前のミシュラン・レッドガイド

手元に、昭和2年に出版された「欧州旅行案内」(上村知清著 海外旅行案内社刊)という本があるが、この本はシベリア鉄道と欧州航路の双方でのヨーロッパへの行き方、費用、観光案内を詳しく描いている。アールデコ調の表紙http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20050510のデザインも大変美しい。「外國旅券下附願」は、美濃紙に毛筆で書き、族称(華士族平民の別)も記す」とある。
(西洋人に引きかへ)「日本人は、荷物や着更へを持って旅行する國民で、或る人の如きは之を一種の見得とさへしてる様だが、実際はこんな七面倒な用意は抜きにして、簡便に世界中を駆け歩く習慣をつけたいものと思ふ」、「元来日本人旅客には、一種の妙な癖があって、ホテル等に宿ると、無闇にボーイなんぞに、チップを出し過ぎて却って、悪口を言はれる人々が甚だ多いのは困ったものだ」という、未だに耳の痛い記事もある。
この本では、「親切で気持ちよく宿れる一流のホテル」として巴里ではプラザ・アテネ、クラリッジ、グランドホテル、コンチネンタルが挙げられ、倫敦ではリッツ、カールトン・グランドホテル、メトロポール、ヴィクトリア、サボイ、セシルが挙げられていた。
 2000年にパリの空港でウィーンへの乗り換えを待つ間、寝酒のワインを買った後で書店を覗いてみたところ、ミシュランhttp://www.viamichelin.com/のフランス・レッドガイドブックの2000年版が平積みされており、出版100周年記念ということで1900年版の復刻版が付録に付いていた。買ってみると、当時のミシュランはレストランは掲載しておらず、ホテルとガソリンスタンド、ミシュランタイヤのサービスセンターが掲載されているだけであったことが分かる。当欄「旅行計画作りに役立つルート・プランナー」http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20040419でも紹介したが、ミシュランは無料(要Register)でインターネットでドライブ旅行計画自動作成機能やレッド・ガイドのホテルやレストランのコンテンツ、利用者のプランに即した地図の描画機能などの提供を行っている。これが実に便利で74年に泊まったパリのカルチェラタンのレストランやホテルがどう変わっているかをチェックしてみたりした。ミシュランはドライブ旅行に頻繁に出かけてもらって「タイヤをすり減らしてもらう」目的で正確無比のガイドブックを作り上げたが、どうやら21世紀のIT革命の時代を迎えるて情報ハイウェイの通行料を無料化し、その宣伝効果で稼ぐ戦略に転換したようだ。なお、ミシュランのガイドブック等はPDAや携帯電話用のフォーマットも用意されているが、こちらは有料だ。
☆右上の写真は ミシュラン・フランス・レッドガイドブック1900年復刻版の表紙