オーストリアにはカンガルーはいない!

先週、オーストリア大使館http://www.austria.or.jp/が、Österreich(原語)の日本語表音表記を「オーストリー」と変更するとの報道があった。今日現在、オーストリー大使館商務部http://www.austriantrade.org/japan/our-office-in-tokyo/ja/のホームページを見ると「Österreich 日本語表音表記 の変更について」という案内がトップに掲げられ「残念ながら、日本ではヨーロッパに位置するオーストリアと南半球のオーストラリアが混同され続けております。この問題に対し、大使館では過去の文献などを参照し検討を行った結果、Österreichの日本語表音表記を『オーストリー』と変更する旨、ご連絡差し上げます」とあった。
しかし、オーストリア大使館のホームページ上の表記は未だに“オーストリア”だ。また、商務部のホームページからリンクしているオーストリア政府観光局の日本語ホームページからも閲覧できる2006.11.17観光局発行のメールマガジンオーストリア・トラベル・ニュース」の「国名日本語表音表記について」http://www.austria-connection.at/anto/travelnews/vol_111.htmlという記事には「さて、メディアでこのところ騒がれております、オーストリアの日本語表音表記の変更についてのお知らせです。『オーストラリア』と間違えられないため、国名を『オーストリア』から『オーストリー』に変更するという趣旨のニュースが流れ、当観光局にも朝からたくさんの問い合わせが続いております。日本では、1945年から現在の名称『オーストリア』が正式に使われており、既に定着しています。−中略− 既に日本中の本や学校の教科書が『オーストリア』と明記されており、日本人も子供の頃からこの名前に親しんでいます。そこで私たちオーストリア政府観光局とウィーン代表部は、現在使われている通り『オーストリア』をこのまま使い続けることを皆様にお知らせ申し上げます」とある。

 オーストリー大使館商務部の「Österreich 日本語表音表記 の変更について(PDF)」http://www.austriantrade.org/fileadmin/f/jp/PDF/Umbenennung_von_Oesterreich_im_Japanischen.doc.pdfには、「19世紀から1945年までの間Österreich はまさに『オウストリ』と表記されていたのです」とあるが、決して日本人皆が「オウストリ」と読んでいたわけではない。以前紹介した昭和2年出版の「歐州旅行案内」(上村知清著 海外旅行案内社刊)にも「オーストリア」と表記されていた。

日本語として定着している「オーストリア」という固有名詞を一国の大使館が“自己都合”で変更を求めるというのも珍しい話ではないだろうか。たとえてみれば、オランダが「ホーランド」と呼んでくださいと言い始めたら、誰がその主張が通ると思うだろうか。

右上の写真は10年ほど前にザルツブルクの街角のみやげ物店のショーウィンドーに飾ってあったTシャツ。胸に“NO KANGAROOS IN AUSTRIA”と書かれていた。
 そう言えば、1985年のオーストリアを揺るがせた“ワイン・スキャンダル事件”の際は、オーストラリアの側が「オーストラリア・ワインとオーストリア・ワインを混同しないでください」という趣旨の新聞広告を出していたのを思い出した。

■今日のブックマーク記事■
□Nikkei BP Net「エコを楽しむ旅に、行ってみたい?(前編)」
http://www.nikkeibp.co.jp/style/eco/eco_society/061116_tour1/ 
□ViaMichelin Newsletter「Where to sample real Beaujolais」(フランスにおける真っ当なボージョレの飲める店を紹介)
http://www.viamichelin.co.uk/viamichelin/gbr/tpl/mag5/art20061115/htm/gastronomie-beaujolais.htm 

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