飛行機から地上の景色を楽しむのに役立つ地図

ヨーロッパ行きのシベリア上空通過フライトに搭乗しているときなど、延々と眼下に大地を眺められることがある。このようなときに、機内のデジタルマップより詳しい地図があれば眼下の河川や湖、山脈、大都市、コンビナートなどが識別できて楽しいのに、と思ったことはないだろうか。当欄の12月21日の記事「世界歴史地図を持って時間軸をさかのぼる旅を旅しよう」http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20041221で紹介した旅人向けの地図でも用をなすだろうが、アメリカ防衛地図局航空宇宙センター発行の本来空軍パイロットが爆撃に使うというちょっと物騒な地図があると、空の長旅が俄然面白くなる。
 この地図には、100万分の1の作戦航法図(ONC)と50万分の1の戦術的航法図(TPC)の2種類がある。いずれも等高線が書き込まれ陰影法と段彩法という地図技法を駆使して、爆撃機コクピットから肉眼で見た景色に近いリアルな立体感が地図上で再現されている。高層建築や工場の煙突、橋、高圧電線、滑走路などの地上の目標も書き込まれており、自分が現在どの辺りを飛んでいるかということも分かるだろう。なにしろ、スパイ衛星を駆使して冷戦時代に作った代物だから正確なことはこの上ない。世界中をカバーしているので、自分の目的空港の周辺図を買っていけば、乗っている飛行機が高度を下げ始めてからの眼下の景色が鮮明に見て取れる。
 この地図は、東京にある三省堂書店神田本店の2階の地図専門店マップ・ハウス http://www.maphouse.co.jp/でも売られている。ホームページの「世界地図」の中にある「世界航空地形図」を見ると1枚1,890 円で売られていることが分かる。マップ・ハウスにはミシュランなどのドライバー向けの地図やトーマス・クックの欧州鉄道路線図、アルプスなどの山岳地図、ハイキングマップも置かれている。
 とりあえず、「戦術的航法図」がどのような地図かを見てみたい人は、テキサス大学のPerry-Castañeda Library Map Collection http://www.lib.utexas.edu/maps/のサイトで見ることもできる。たとえば、Online Maps of Current Interestのページには、航空機事故や治安・紛争、伝染病、自然災害など旅行者の安全に関わる要注目地域の最新地図がリンクされており、現在は、イラクスマトラ沖地震による津波被害マップなどがリンクされている。Iraq Maps and Iraq Maps on Other Web Sites にある Al Mawsil [Mosul]-Arbil Region, Northern Iraq (tactical pilotage chart)http://www.lib.utexas.edu/maps/middle_east_and_asia/iraq_north_g4b_89.jpg は、50万分の1の戦術的航法図だ。地形のほかに飛行場の滑走路の長さと方向、高圧電線、高層建築物などが見て取れるだろう。