旅先でも我が家でもテーブル・ワインをエンジョイしよう

1980年頃から、仕事でヨーロッパに行くたびに半ダース以上のワインを持ち帰り、デパートで売られている同じシャトーの同一ヴィンテージのワインを呑み仲間と味わい比べていたが、全員が口をそろえて持ち帰った方のワインが日本で売られているものより美味しいと叫んだのを覚えている。輸送や保管時のダメージや防腐剤などの添加物の違によるのだろうが、そのときから日本で高いワインを買うのは止めてしまった。
 最近久しぶりに昔の呑み仲間にあって話をしたが、皆、高級ワインは敬遠してもっぱらテーブルワインを呑んでいると言っていた。それに、三大シャトーのワインも含め昔のような芳醇さ重厚さが失われてしまい、ライトな味付けの料理に無理矢理合わせたかのような“堕落”ぶりを悲しんでいた。
 私自身も、もっぱら日本では赤は「赤道を二度越えて船便で運ばれてきても、味の変化が少ない」スペインやポルトガルのワインを楽しんでいる。スペインに詳しい人間に聞いたところ「大航海時代以来スペイン・ワインは船旅に免疫ができている」そうだ。
家で呑む白ワインはというと、ウィーンに住んでいた二十歳代後半の頃にその魅力を味わった、オーストリア・ワイン一辺倒だ。オーストリア・ワインの魅力については拙著「ウィーン旅の雑学ノート」でもふれさせていただいたが、時代にマッチした辛口嗜好/気候にも恵まれ天然ワインが豊富/アルコール度も充分/葡萄の種類も豊富でワインの個性が豊か などその魅力を語り出したら尽きることがない。オーストリア・ワインに興味のある方は、「オーストリアのワイン 文化の香り」http://www.winesfromaustria.jp/のホームページも参照していただきたい。
日本のワイン・ショップでは滅多にオーストリア・ワインにお目にかかれないが、ありがたいことに、岩手県大迫町の山奥にヴィノテーク・オーストリアhttp://www.edelwein.co.jp/05vino/index.htmlという第3セクターが運営するワイン博物館兼ショップがあり、約100種類、2万本のオーストリア・ワインを貯蔵・試飲・販売しており、インターネットでの注文も可能。年に二回は、ヴィノテーク・オーストリのクリアランスセールの案内葉書が届いている。
さて、ヨーロッパなどを旅行中はどうやって「ワイン文化」を堪能しているかというと、ひとつは、パリのNicolas http://www.nicolas.tm.fr/フィレンツェのAlessi http://www.enotecaalessi.it/alessi.htm、ウィーンのVinothek http://www.ststephan.at/といった信頼の置けるワインショップで買ってきたワインをホテルの部屋で通りでも眺めながらじっくりと味わうという方法だ。もちろん、チーズやパンを買うことも忘れない。ワインショップまで足を伸ばさなくても、宿の近くの品揃えのいいスーパーでもよいだろう。スーパーで買う場合は地元値段としてはちょっと高めの€15〜20のものがコスト・パー・フォーマンスがいいような気がする。
もうひとつは、最近日本でもはやり始めたグラスで銘酒が飲めるワインバーを訪れることだ。私のごひいきはパリのl'Ecluse(日本語ホームページ有り http://www.leclusebaravin.com/index3.htmやウィーンEnrico Panigl http://www.panigl.at/フィレンツェEnoteca de' Giraldi(日本語ホームページ有り)http://www.vinaio.com/jp/default.aspだ。Enrico Paniglのホームページを見ると1/8リットルのグラス・ワインが€ 1.90からあった。
やはり、ワインは地元の料理と一緒に味わいたいというときは、レストランよりもビストロやトラットリアといった地元客で賑わう店に行くことにしている。 拙著「フィレンツェ旅の雑学ノート」では、40軒以上のトラットリアを味わった料理とワインの値段入りで紹介したが、機会があれば日本も含めたおすすめ“B級レストラン”のリストを作りたいと思っている。
 フィレンツェの取材で気が付いたのだが、エコノミーなトラットリアでも料理に気をつかっているところはハウスワインも美味しいものを出すところが多かった。フィレンツェでは相席の者同士でテーブルに置かれた藁でくるまれたキャンティワインを勝手に注いで飲むという伝統を守っているところも多い。お勘定の仕方はと言うと、ウェイターが目分量で判断するという大らかさだ。 
 ヨーロッパの見知らぬ街や村で、ワインの品揃えがよく、値段は手頃というレストランを探すときは、ミシュランのガイド・ブックのウェブ版であるViaMichelin http://www.viamichelin.com/を使って、星なし・1本ナイフ・フォーク・マーク、あるいは“手頃な値段でおいしい料理”マークの付いたレストランを探し出す。そして、次にComment欄を見てワインに関する好意的な記載がある店を選び出すようにしている。
ちょっと贅沢な「食べ歩きの旅」をするときの宿選びにもViaMichelinは重宝する。とっておきの手は、レストランとして有名で予約待ちが数ヶ月という店で、ホテルも兼ねているところを狙うことだ。ViaMichelinのレストラン欄を見ると、高い評価を受けた店の中に「6rm」といった表示が出ていることがある。これは、「お泊めできる部屋が6roomあります」という意味。部屋数が少ないせいもあってホテルとしての評価は低いものが多く、従って値段も安い。しかし、2食付き、3食付きといったアレンジもできるはずだから、予約待ちの食事客を飛び越えてレストランの優先受付けをしてもらえる公算が大きく、宿泊客向けの優待コースを用意している店も少なくない。
 ちょっと古い記事でリンク切れも多いが当ホームページの「テーブルワインに酔う」 http://www.geocities.jp/euro747/tablewine.htmlの記事もご参照いただきたい。
☆写真はウィーンのワインバーEnrico Panigl http://www.panigl.at/

名ソムリエの、ふだんワイン

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ポケット・ワイン・ブック 第6版 (ハヤカワ・ワインブック)

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