11月11日はオーストリアの新酒ホイリゲの解禁日

 オーストリアの新酒ホイリゲは毎年11月11日の聖マルティンの日に解禁される。
 ホイリゲの歴史は一七八四年にさかのぼる。当時、ワインの販売は高額の免許税と引き換えに一部の商人に独占されていた。そのため、甘い汁は農民の頭越しに吸い取られワイン造りの農家は疲弊していた。そこで、ウィーン郊外の農民たちが当時の啓蒙的皇帝ヨーゼフ二世に自分たちにもワインを売らせてくれと請願して、一定の条件で認められたのがホイリゲの始まりだ。条件というのは、「ウィーン郊外の一定地域の農民が自分たちの畑から取れた葡萄で造られる新酒のみを、自分の農家の軒先で市民に飲ませたり売ったりしてもよい」というもの。したがって、売りつくしたら閉店しなければならなかった。今でも、伝統を守るホイリゲでは営業月や営業日を限定したり、売り切れと同時に店を閉めたりしている。
 九月から十月にかけて収穫された葡萄は、まず絞って葡萄果汁となる。これがモストと呼ばれるもので、アルコールに弱い人はホイリゲでもこれを飲む。このモストを四週間ほど寝かせると、シュトルムという濁り酒となる。これをさらに二カ月近く寝かせると、発泡性の残るすっきりした味の辛口の新酒ホイリゲになる。ウィーンの場合、ホイリゲはほとんど白ワインだ。
 ウィーンとその郊外でホイリゲを造る葡萄の種類はグリューナー・ヴェルトリーナを中心にヴァイサー・ブルグンダーやノイブルガー、ラインリースリング、ヴェルシュリースリング、ミューラー・トゥルガウなどが混じっている。これは、第二次大戦直後の混乱期に、同じ畑に異なる葡萄を植えてしまった名残りだ。おかげで、葡萄農家ごとに、微妙に味が違う新酒ができあがり、今では、その違いが売り物にさえなっているので、おいそれと新種を導入することもできなくなっている。客としては、ミックスされた安価なホイリゲでも個性を楽しめるので異論のあるはずもない。
 新酒到来の印は不思議なことに日本とそっくり。軒先に下げられる杉玉ならぬ、松やモミの葉の束だ。
 ホイリゲについては、「ウィーンのホイリゲhttp://language.tiu.ac.jp/wien/1/h1.htmという日本語のホームページも参考になるだろう。
 さて、そのホイリゲの日本での入手方法だが、昨年からサントリーが輸入を取りやめたためもあって、一般のワインショップで入手するのは難しくなってきている。私は、もっぱら、岩手県大迫町オーストリア・ヴィノテークhttp://edelwein.co.jp/cgi-bin/newsform.cgi?id=1099278931 に注文することにしているが、Googleで「ホイリゲ 2005」と検索すれば、いくつかのオンライン販売サイトやワイン・ショップのホームページで2005年のホイリゲを販売していることが分かる。もっとも、大半のサイトは予約で「完売」になっていた。
 オーストリア・ワインの魅力については、拙著「ウィーン旅の雑学ノート」にも書かせてもらったが、「オーストリアワインマーケティング協会」のサイト「オーストリアのワイン 文化の香り」の日本語ページhttp://www.winesfromaustria.jp/も参照いただきたい。サイトマップがないのでわかりにくいが「ニュース イベント」「ワイン ワイナリー」「輸入業者 小売業者」「情報 サービス」の各項にマウスをポイントするとさらに細かい項目が現れる。
☆写真は ドナウ河を見下ろす葡萄畑の中にあるホイリゲ“Sirbu”(Kahlenberger Straße 210, ウィーン19区)

ウィーン 旅の雑学ノート―ハプスブルクの迷宮を極める

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オーストリアワインガイドブック

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