「さよなら、消費社会−カルチャー・ジャマーの挑戦」

 1942年エストニアに生まれ、日本にも10年ほど滞在したことのある実験映画やドキュメンタリ作品の映画制作者で、「アドバスターズ・メディア財団」創始者のカレ・ラースン氏が「さよなら、消費社会−カルチャー・ジャマーの挑戦」を大月書店http://www.otsukishoten.co.jp/search/index.htmから出版した。同書の表紙折り返しには「メディアやブランドが提案する生き方なんか、クールじゃない。過剰な消費を繰り返すライフスタイルから抜け出して、ダイナミックでセクシーな、自分らしい『ほんとうの生き方』を追い求めよう。メディアと消費とエコロジーを問い直し、『消費する日本人』に向けて、新しい文化と価値観の創造を呼びかける」とあった。
カレ・ラースン氏は、「テレビの電波はパブリック(公共)のものだったはずだ!しかし、実際は大きな会社や広告会社が独占していて一般人がアクセス不能になっているんだ。公共の電波にデモクラシーがないんだよ!! (怒)」と激怒し、既存のメディアに絶望し、自らのメディアを作り上げる事にした。それが「Adbusters」http://adbusters.cool.ne.jp/という財団と雑誌でありそのサイトだ。「Adbusters」は、日本語に直訳すると「Ad=広告/Busters=退治屋」。「人間がより人間らしくいきることのできる」オールタナティブな社会を目指すべく、人々に呼びかけて行くのが主な目的という。
 同氏は、ほかにも、環境問題や経済問題などに幅広い問題提起を行っており、「無買デー」「ノーTVウィーク」「2分間のメディア革命」「真のコスト経済」などのユニークなムーブメントも主導している。日本の「100万人のキャンドルナイト」などにも影響を与えている。
同書の中の、53頁から55頁にかけてある「もう少し未来には、人類が天から授かったもの−自分の感覚と自分の意志によって楽しむ人生−がコンピューターによって排除されてしまうだろう」(14行略)「遅かれ早かれ、生の体験がもたらす『感動』を、能力的に経験できない人間が世界中に溢れてくるだろう。なにを見てもなにを聞いても、なにを味わっても、どれだけ鮮烈でどれだけ美しかろうと、五感の感覚から生じた感情は即座に切り刻まれ、意味があるのか価値があるのかをさっさと判断され、有益そうな情報だけが断片的に理解され、ほかは捨てられるようになるだろう。感動など生じてこない。感情能力は破壊されているのだ。そして、一度感情が破壊されてしまったら、もうそれ以上『壊れる』こともない」という主張には大いに賛同できる。
 個人的には、「五感の感覚から生じる感情」を失わないためにこそ、デジタルの世界から極力離れ、アナログの感性を癒してくれる「旅」に多くの時間を割きたいとつくづく思う。
「さよなら、消費社会−カルチャー・ジャマーの挑戦」【目次】
◇日本のみなさんへ
◇はじめに−カルチャー・ジャミングについて
◇秋
 気分障害
 こころのエコロジー
 メディア・ウイルス
 洗脳された消費者
 ポスト・ヒューマン
◇冬
 見えない宗教
 アメリカン・ドリームの終焉
 教科書に載らないアメリ
 ブランドのワナ
 ねずみ講型の世界経済
◇春
 改革への衝動
 カルチャー・ジャマーの野望
 ミーム・ウォーズ
 ミーム戦士
◇夏
 怒りの感情
 第二のアメリカ革命(カルチャー・ジャマーのための自己主張訓練)
 企業を打ち負かす
 脱マーケティング
 メディア憲章を求めて
 「成長」を見なおす
◇エピローグ

☆右上の写真は、エストニアhttp://www.estonia.or.jp/news/news.htmlの首都タリンの旧市街(世界遺産)を囲む城壁。
  

さよなら、消費社会―カルチャー・ジャマーの挑戦

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