予算ばかりではなく、帰国してからの決算も考えよう

旅行会社に在職していたときに気付いたのだが、個人旅行者の中には、旅行業者に支払う費用を少なく抑えれば、上手な買い物をしたと錯覚する人が少なくないようだ。実際には、予算の先送りをしているに過ぎず、現地で鉄道予約やエンターテイメント・チケットの手配を行ったりするために旅先の貴重な時間を浪費するばかりか、日本で得られる割引きや特典を得られず、行列を作っている間にスリなどに狙われるといった危険も誘発しかねない。
 個人旅行手配をする旅行会社としては、「予算ばかりではなく、帰国してからの決算も考えましょう」というセールス・トークにより、個人旅行者が不利益をこうむらず、なおかつ費用の削減ができるようサポートする姿勢が必要だと痛感した。これは、個人旅行者が出会うであろう旅先での危険との遭遇率を低下させ、トラブルの芽を事前に摘むことにもつながる大事な作業でもあった。
また、日本で購入して行った方が経済的な旅行手配も少なくない。一定のクラス以上のホテルであれば、日本のインターネットホテル予約サイトや旅行会社で購入した方が、ホテルのいわゆるドア・レイト(定価?)より安いケースがほとんどだ。これは、予約サイトが団体価格に準じた個人旅行者向け割引価格を提供しているからだ。
もうひとつの例としては、日本などで旅行業者を通じてしか買えない世界各地の個人旅行者用鉄道パスがある。手配会社欧州エキスプレス社の鉄道情報サイト「OHSHU鉄道パス」http://www.rail-ohs.com/には、選ぶのに迷うほど多様な鉄道パスを、訪問地を入力することにより最適選択する機能や主要駅間の円建て料金検索機能もあり、現地で個々の区間チケットを買うよりも日本でパスを購入した方が安上がりであることが分かるだろう。
もっとも、現地発ツアーや市内観光バス、エンターテイメント・チケットなどのように、現地で買った方が安いケースもいくつかある。

予算と決算の食い違いを少なくするためには、現地の物価や旅行者に適用される両替レートと手数料を把握しておくことも重要だ。また、物価と旅行費用を予習しておけば、両替のし過ぎで、日本円への再両替で手数料のロスをすることも避けられる。
物価と旅行費用を知る目安として、昔、頼りになったのはアメリカのアーサー・フロンマー氏 http://www.frommers.com/が出していた「1日$○○の旅」シリーズのガイドブックだった。学生食堂の利用の仕方から学生寮の泊まり方、鉄道や観光バスの割引特典の活用法など「目から鱗」の情報に大感激したものだった。しかし、最初は1日$5だったシリーズも$10、$15、$20、$30と順調に予算アップし、最新の2004年版(第46版)ではFrommer's Europe from $85 a Dayと「$85以上の旅」という表現になってしまっていた。これは、インフレを反映しているばかりではなく、著者と読者が豊かになり扱うホテルやレストランも高級化していったせいでもある。同シリーズの高級化とともに、個人的にはよりバックパッカー向けのLet' Goシリーズ http://www.letsgo.com/やオーストラリアのロンリー・プラネット社 http://www.lonelyplanet.com/のShoe Stringsシリーズなどのガイドブックの方を愛用するようになった。旅行予算に少し余裕のある人には世界最大級の旅行書出版社Fodor's http://www.fodors.com/のガイドブックもおすすめだ。
今、自分自身で満足できる宿や食、エンターテイメントなどを組み込んだヨーロッパの旅を行うとしたらいくらぐらい費用がかかるのだろうか。2〜3つ星のシャワー・朝食付きシングルに泊まり、地元の人が通う大衆的なレストランで1日2回食事し、コンサートやオペラなども安い席で3日に1回は楽しむといった旅行を想定すると、鉄道パスなどは別として、1日当たり2万5千円を用意し、2万円で済ませるよう努力し、決算段階で平均2万2,500円で終えるといったところだろうか。
 ペンションやファストフードなどを利用すれば$85は無理かもしれないが、$100ぐらいで収めることも不可能ではないだろう。

ショップやレストラン、ホテル、観光施設などの価格や入場料を調べるのには、オンライン・ガイドブックwCities.com http://www.wcities.com/を利用してそれらのオリジナル・ホームページを開いてみるとよい。とくに、ShoppingのMarketsは、地元の生鮮食品市場や蚤の市、露天市などを調べるのにも役立つ。wCities.comの利用法については、「英語のウェブ・ガイドブックで昔の旅を“復元”」http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20051216を参照してほしい。

最後に、旅の予算と決算の管理を行うには下記の記事も参考にしていただきたい。
「旅日記の代わりに小遣い帳をつけることをすすめる」http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20050210
「海外の旅行ガイドブックを振り返る」http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20041229
☆右上の写真は 1963年に翻訳出版されたFrommer氏の「ヨーロッパ1日5ドルの旅」(日本評論社刊)

Frommer's Europe from 85 a Day (Frommer's A Day)

Frommer's Europe from 85 a Day (Frommer's A Day)

  • 作者: Reid Bramblett,Richard Jones,Suzanne Rowan Kelleher,Joseph S. Lieber,Herbert Bailey Livesey,Sherry Marker,Hana Mastrini,George McDonald,Haas Mroue,Cheryl A. Pientka,Darwin Porter,Danforth Prince,Beth Reiber,Sascha Segan,Christina Shea
  • 出版社/メーカー: *Frommers
  • 発売日: 2004/08/27
  • メディア: ペーパーバック
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