アートを楽しむ旅に出よう

海外旅行となると、ふだん美術館に一歩も足を運んだことのない人も巡礼のように美術館を訪れるようになるようだ。これを機会に美術の魅力に引き込まれていくのならご同慶の至り。しかし、美術館でガイドブックに出ている絵を確認しては次の展示室に移っていく人の姿を目撃すると、旅で訪れたというアリバイ作りに貴重な時間を割いているような気がしてならない。そこで、美術館ばかりでなく、街角やレストラン、ホテルでも気軽にアートを楽しむ旅を提案してみたい。

とは言っても、やはり美最初に術館について触れよう。まずは、政府観光局で美術や芸術に関するパンフレットをもらおう。ウィーン市観光局http://www.vienna.info/article.asp?IDArticle=11771の日本語「博物館ガイド」を見るとテディベア博物館や葬儀博物館、犯罪博物館、サーカス・ピエロ博物館などといった変わり種も紹介されている。観光局ではついでに美術館の入場割引と市内交通フリーパスが一緒になったカードの有無も聞いておこう。欧米の大都市の多くが観光客誘致目的で用意している。

 美術館の開館時間や入場料、特別展やイベントの情報は美術館独自のホームページで確認するのが一番確かだ。シーズン中にできる2時間近く待たされる行列ができるフィレンツェのウッフィツィ美術館のホームページhttp://www.polomuseale.firenze.it/uffizi/には、3ユーロの手数料を入場料に追加して払うだけでフリーパスで入れるといった案内が載っている。美術館のホームページにはどの絵が修復中で、どの絵が外国貸し出し中、館内図と主要絵画の画像などを載せたものもある。わざわざ行ってお目当ての絵が見られずがっかりということを避けるためにもサイトを事前にチェックしておこう。

なお、イタリアの美術館の最新の開館時間や入場料は、国立美術館などを管轄する文化財・文化活動省のホームページ http://www.beniculturali.it/にある美術館リスト(Elenco dei musei )のページ http://www.arti.beniculturali.it/musei/elenco/から各美術館のページを開いて確認するとよい。

 美術館や博物館のオリジナル・ホームページのリンク集の充実ぶりには目を瞠るものがある。中でも、7000ものサイトを見事にリンクしている「日本と世界の博物館、美術館、天文台へのリンク集」http://www.pp.iij4u.or.jp/~murai/は秀逸だ。子供の博物館、水族館、動物園、植物園の項目もある。「世界の美術館BEST150」など初心者向けの厳選リンクも親切だ。旅先で鑑賞したいお目当ての絵が貸し出し中や修復中でないかを美術館のオリジナル・サイトで事前にチェックしたり、開館時間や特別展の確認するのにも役立つ。左フレームには美術界のニュース、イベントなどの情報も豊富にある。
 本日、久しぶりに開いてみるとリニューアルのための「休止」が長引いているようで残念だ。

 「インターネットミュージアムhttp://www.museum.or.jp/ミュージアム情報の総合ポータルサイトとして便利だ。データベース「ミュージアム・イン・ニュース」は専門家向けだが美術鑑賞旅行を目指す人には必見。ICOM(国際博物館会議)日本委員会のページやバーチャル・ライブラリー・ミュージアム・ページなどへのリンクもあり、世界の美術館情報への入り口として大いに活用できる。

 「アジャンス・デ・ミュゼ・フランセ」http://www.museums.france.or.jp/index_2.htmは、1895年、美術館における美術作品の管理・保存と新たな作品の取得によるコレクションの拡充を目的として設立されたフランス国立美術館連合(Réunio des Musées Nationaux - R.M.N.)の日本における提携先でフジテレビジョンの子会社でもある会社のサイトだ。同連合には、ルーヴル美術館オルセー美術館などフランスを代表する国立美術館33館が結集。展覧会の企画、ミュージアムグッズ・出版物の制作・販売などの業務を行っている。「アジャンス・デ・ミュゼ・フランセ」のサイトは「Information 活動内容の」ページから見ていくとよい。
 ミュージアムグッズ販売の案内やルーヴル美術館の入場券や美術館の共通入場カード「カルトミュゼ」の日本での購入方法、フランス各地の「展覧会情報」、「フランス国立美術館連合」リンク集などが掲載されている。

 英語のアート・ポータルとしてはWorld Wide Arts resources http://wwar.com/index.htmlがある。美術館を初めとする世界の芸術・文化施設、研究機関、画廊、特別展、オペラ座などをリンクした総合芸術サイト。数千の美術館をアルファベット順に検索できるページが便利。JAPANで検索すると日本の作品を収蔵した海外の美術館までリストアップされる。

 多くの美術館が学芸員やプロのガイドが案内するガイド・ツアーを催している。数年前、フィレンツェでヴェッキオ宮殿からウッフィツィ美術館、ヴェッキオ橋、ピッティ宮殿を繋ぐ“ヴァザーリ回廊”をガイドツアーに参加して歩いてみた。ガイドはイタリア語で内容はよく分からなかったが、絵画を通してルネッサンスの歴史が実によく分かった。
 また、知人はインターネット上でローマの遺跡をガイドしてくれるローマ大学の教授がいるのを見つけた。一人8000円という値段に躊躇したものの、案内をしてもらった後では「安いものだった」と大感激していた。こういったオーダーメイドのツアーも好奇心の強い人にはおすすめだ。チャレンジしてみたい人は観光局でガイド協会を紹介してもらってもよいだろう。

 ウェブ上のヴァーチャル・ツアーで自宅にいながら美術鑑賞をすることもできる。Google検索エンジン日本語版でヴァーチャル・ツアーと検索してみよう。数万件のヒットがあり、ルーブル美術館の日本語公式ホームページにある「ルーヴル美術館ヴァーチャル・ツアー」や「動画で見て知る!セントレア中部国際空港)バーチャルツアー」などの人気サイトから、映画や美術作品、海底探検、古生物など好奇心いっぱいの仮想旅行を集めた「赤いランプの終列車 ヴァーチャルツアー」、世界中のテキスタイル関連サイトに世界地図上から飛んでいける「ヴァーチャル布ツアー」、学研の教育用サイトと思われる「博物館・科学館に行こう」など多種多様なヴァーチャル・ツアー・サイトが見つかった。

 Google英語版で、Virtual tour と検索すればその数は更に増える。世界中のヴァーチャル旅行サイトを集めた便利この上ないリンク集“Virtual Tours”http://www.virtualfreesites.com/tours.htmlというものもある。まず、画面中央のVirtual Tours of Museums and Exhibitsをクリックしよう。Virtual Tours of Museumsにはシスティナ礼拝堂からメトロポリタン美術館まで80余りの美術館・博物館のネット上での鑑賞ツアーが体験できる。Virtual Tours of Exhibitsにはスミソニアンや各地の写真博物館、動物園、ナパ・ヴァレーのワイナリー・ツアーなどのサイト50ほどがある。

なお、Googleのイメージ検索は、自分の好きな絵画を画像で見ながらどこの美術館に所蔵されているかを確認するのにも役立つ。たとえば、フランスの画家Gustave Moreauのある絵を所蔵する美術館を探したいときなど、画家の名+絵の名称でほとんどが見つかる。また、ヨーロッパの主要美術館に行けば、多数の矢で射られた「聖セバスチャンの殉教」の絵がひとつは架かっているが、「St. Sebastian」とイメージ検索すると数百枚の絵が現れる。

 アートは街角やレストラン、ショップでも楽しめる。手っ取り早いのは、アートをテーマにしたウォーキングツアーに参加することだ。ロンドンでは日本語ガイドが案内するビートルズやシャーロックホームズ、夏目漱石などをテーマにしたツアーがある。英語やドイツ語だがウィーンにはアール・ヌーヴォーや大作曲家、建築巡り、オペラハウスの舞台裏案内など30以上のコースがある。地図入りの「建築ガイド」や「ギャラリー・ガイド」といった本を現地で買って自分で興味に合わせたコースを組み立てて歩き回ってみるのもよいだろう。ついでに、オークションハウスやアンティーク・ショップ、蚤の市、古本屋や美術書専門店などもコースに組み込もう。芸術作品の宝庫である教会や修道院を訪ねるのも忘れないようにしよう。チューリッヒにはシャガールプラハにはミュシャの作った幻想的なステンドグラスが鑑賞できる教会もある。もちろん礼拝堂を飾る彫刻やフレスコ、絵画も見逃せない。

レストランやホテルもどうせならアートに浸れるものを選ぼう。ピカソやダリ、コクトーが通ったレストランやレンブラントシャガールの本物の絵をかけたレストランもある。芸術家ゆかりのホテルや美術館級の芸術作品をインテリアにつかったホテルも多い。最近は、デザイナーズ・ホテルと呼ばれる画家やファッション・デザイナーが手がけたプチホテルも増えているようだ。

 おみやげもアートにまつわるものを探してみよう。私は、オークションハウスで気に入った版画を買うようにしているのだが、たいていの国が旅行者には付加価値税を免除する制度を設けており、お買い得だ。芸術家がデザインした食器やカトラリー、グラス製品、陶磁器など日常に使えるものもおすすめだ。もっと手軽なおみやげもある。たとえば、絵画や建築をモチーフにした記念記手などいかがだろうか。ミュシャフンデルトヴァッサーの絵を使ったテレフォンカードなどというものもあった。クリムトやダリの絵をラベルにしたワインを買ってきたこともある。

☆右上の写真は ウィーンのミュージアム・クォーターhttp://www.mqw.at/jp/正面入り口

悪魔のダンス―絵の中から誘う悪魔 (ハートアートシリーズ)

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楽しいロンドンの美術館めぐり

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Highlights of Art: Thyssen-Bornemisza Museum, Madrid (Klotz)

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