1974年の欧州鉄道旅行を今一度 その3

 パリでは、1974年の2月27日、28日と2泊し、3月1日の夜行列車でマドリッドへと向かった。帰国時にもパリに戻り、3月21〜23日と3泊し、24日発のエールフランス196便で帰途についた。
 来年予定している復刻版の旅は、帰国時にパリに戻る必要がないので、最初に5連泊してみようと考えている。

パリでの滞在中は、入場券の半券から判断するとルーヴルはもちろんのこと、ギュスターヴ・モロー美術館には3度も通った。3度目には、館長がデッサンの保存庫を自由に出入りさせてくれたことを覚えている。
1974年の旅では、ウィーンからムンク美術館のあるノルウェーオスロへ足をのばす予定にしていたが、あまりの寒さに計画を変更し、ウィーンには2泊しただけでフィレンツェに舞い戻った。しかし、ムンクの絵を見逃して帰国便の出発地パリに戻り着いたときに奇跡が起きた。パリのシャイヨー宮でなんとムンクの大展覧会が開かれていたのだ。苦労してオスロに行ってももぬけの殻だったはずだ。
 シャイヨー宮の守衛さんに「ムンクの展示はどこですか?」とたどたどしいフランス語で聞いたとき「ムンクは知らないけど、ミュンシュだったらあそこだよ」と言われたことも記憶している。フランスの大指揮者シャルル・ミュンシュのスペルを覚えていたので、すぐにムンクはフランス読みでミュンシュなのだと気づくことができた。

パリ到着のその日に、今も手元に残る1974年2〜3月版の「トーマス・クック時刻表」を、マドレーヌ広場近くのトーマス・クック支店で18Fで買ったこともメモから分かる。この時刻表で調べて、予約なしで3月1日18:03オステルリッツ駅発マドリッド行きの夜行特急“Puerta del Sol”号に乗った。ユーレイルパスを持っていたし、オフシーズンの1等のコンパートメントは比較的空いていたので予約なしでも乗れたのだ。
“Puerta del Sol”号は、深夜にフランス側の国境駅アンダーユに着いた。ここで、寝台車はジャッキアップされて軌道幅が広いスペイン国鉄のサイズの台車に乗せ替えられるのだが、座席の車両は歩いて乗り換えることになる。スペイン側の列車に乗ると意外に混んでいた。空席のあるコンパートメントに入ろうとすると、ベトナムの若者が「日本人は入れない」と叫んだのを明瞭に覚えている。アメリカの若者は受け入れても、日本の若者は拒絶するベトナム人が居るといたということが、その後ずっと気になり、1995年にベトナム縦断旅行をするきっかけとなった。
そう言えば、1974年の往きのフライトでサイゴンのタンソニュット空港に降りたときも郊外では砲煙が上がっていた。サイゴンが解放されたのは翌年の4月30日のことだった。 
 1995年に訪れたとき、友人が紹介してくれた若いガイドさんに20年ほど前にこの空港に降り立ち、砲煙を見たと言ったらどうしても信じてもらえなかった。アメリカ大使館の跡地にどうしても行きたいと言ったときも「行ってもなんの意味もありませんよ」と言われてしまった。

さて、復刻版の旅に戻ろう。1974年当時と違い便利になったのは時刻表である。今では、トーマス・クック時刻表の日本語版が年に4回ほど出されており、英語版にない主要駅の構内図や日本語の各国別案内まで追加されている。意外に思われるかもしれないが、このような時刻表を素人で読みこなせるのは日本人だけだそうだ。そう言えば、トーマス・クックを持って旅する欧米人を見たことがない。
 さらに時刻表には革命的な出来事が起こった。無料で活用できるインターネット電子時刻表の登場である。ほとんどの国の電子時刻表には英語版もある。一番使いやすいのはドイツ鉄道の電子時刻表で、インターネット版のほか日本語解説付きのCD-ROM版も一部の書店で売られている。詳しくは、当欄の「鉄道旅行のルーティングに便利な鉄道電子時刻表」http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20040420、「ヨーロッパの鉄道に関する優れた個人運営ホームページ」http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20040930などの記事をご覧いただきたい。

ドイツ鉄道電子時刻表」の英語ページhttp://reiseauskunft.bahn.de/bin/query.exe/enで、現在のパリからマドリッドに向かう列車を調べてみると、当時はなかったTGVでモンパルナス駅を10:10 に発つと、国境のスペイン側駅イルンに15:43着で17:05発の“Altaria 610”に乗り換えてマドリッドのアトーチャ駅に22:30着(所要10時間20分)という列車が見つかった。
復刻版では、忠実に再現したいのでここはやはり夜行寝台にしよう。調べ直すと、“Puerta del Sol”号に代わる豪華列車が見つかった。オステルリッツ駅19:43発でマドリッドのチャマルティン駅09:13着のホテルトレイン「フランシスコ・デ・ゴヤ号」(EuroNight409)だ。昔のタルゴ特急列車http://www.talgo.com/htm/English/English.htmの流れを汲む車両を使用している。こちらは、ユーレイルパス等利用の場合、追加料金と個室寝台利用料が必要となる。所要13時間30分だ。
 「地球の歩き方」の「フランシスコ・デ・ゴヤ号」のページhttp://www.arukikata.co.jp/travel/europe_rail/sta/elipsos.htmlを開いてみると、マドリッド-パリ間は、「グランクラス1名部屋」で普通運賃76,400円、パス割引36,200円 とずいぶん高価だ。

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トーマスクック ヨーロッパ鉄道時刻表 07夏号

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