「ウィーン・ブダペスト15日間の旅 その3」

10月4日の朝、ウィーンのホテルにスーツケースを預け、大きなソフトバッグひとつでブダペストへ向かう。ウィーンはメインの駅となる中央駅(旧南駅)が2014年末完成予定で工事中のため、国際列車の多くは街の中心を外れたMeidling 駅から発着している。ホテルからMeidling 駅までは、地下鉄を乗り継いで25分ほどだった。

 10:03発の特急列車RJ 49は、予想通り空席があり、ひとり席を確保できた。Meidling 駅で買っておいたヴェジタリアン豆腐サンド(2.5 Euro)を昼食にした。ブダペストKeleti駅に12:54着。ブダペスト駅に集まるタクシーは法外な値段のものがほとんどなので、いつものように地下鉄駅に降り、72時間のTravel Card(4,150 Ft.)を購入して地下鉄でホテルへ向かう。

 ブダペストの通貨フォリントは、1 Ft.=0.46円。2年前は0.36円だったので、27%もフォリント高になっている。これは、日本円が安くなったせいばかりではなく、ハンガリー政府の金融政策によりユーロに対してもフォリント高になっているためだ。ちなみに、現金払いのフォリントは以前の旅行で残っていた分とホテル近くのATMでクレジット・カードを使ってキャッシングした分で充てたが、レストランやショップではクレジット・カードで支払った。

ブダペストのホテルは、2010年5月の旅http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20100614でも泊まったことのあるHOTEL KEMPINSKI CORVINUS http://www.kempinski.com/en/budapest/hotel-corvinus/welcome/だ。本当は、2011年11月の旅で泊まった王宮の丘やライトアップされたチェーン・ブリッジが眺められる河沿いのホテルInterContinental Budapest http://www.budapest.intercontinental.com/en/start.htmlのDanube Viewに泊まりたかったのだが、Expediaで調べるとフォリント高もあって以前より5割近く値上がりしていたので諦めた。
 今回は、オーストリアの旅行会社に勤める友人に頼んで週末割引料金のあるKempinskiにした。実は、旅程もブダペストが週末料金期間に当たるように組み直したのだ。

13:30頃、ホテルにチェックインした後、15:00にホテルを出て近くの観光インフォメーションで資料集め。繁華街にある27年来の友人のアンティーク店Vali Folklór(Vaci utca 23)に顔を出す。顔を見るなり友人は、「お前さんのために、カローチャのレース刺繍のテーブルクロスを取っておいたよ。家に置いてあるから明日以降いつでも来てくれ」と嬉しいことを言ってくれた。私が欲しかったのはカローチャ刺繍でもライトブラウンで正方形の大型のものという難しい注文だったが、その通りのものを見つけてくれていたようだ。
もうひとつの私の注文、オーストリア・ハンガリー帝国海軍の軍人達が第一次大戦前の時代に長崎で特注していた自分の軍歴を誇る長崎刺繍のペナントhttp://d.hatena.ne.jp/Europedia/20100330を探してくれと頼んでおいたのだが、こちらは見つからなかったとのことだった。

この後、ホテル前の16番のバスでドナウ河を渡って王宮の丘に登る。中国人団体観光客の多さに驚く。路地裏の古い家並みをしばらくぶらついてから同じバスでホテルに戻る。王宮の丘の裏側にある交通ターミナル“モスクワ広場”が第一次大戦前の政治家の名を取った“セール・カルマン広場”に戻されていた。
1980年代の終わりにもカール・マルクス大通りがエリザベート皇后通りに戻されたりと、社会主義時代の地名が一斉に戦前のものに戻されて観光客が混乱していた。そのとき、めざとい学生が戦前の地図をコピーして路上で売っていたのを思い出した。

夜は、ホテルのコンシェルジュに「よいジプシー・バンドが聴けるレストラン」を紹介してもらったところ、以前行ったことのある店Rézkakas http://www.rezkakasbistro.hu/en/をすすめられた。レストランは、以前と違い、ホテルからも近いイシュトヴァーン大聖堂のそばに引っ越していた。
グラーシュ・スープとサーロイン肉入り茸の手打ちパスタを賞味。音楽も素晴らしく、隣席のドイツから来た夫婦、同じくドイツ在住の日本人女性2人とドイツ語での話が盛り上がっていたらウェイターが「珍しい光景だ」と急に英語からドイツ語に切り替えて話しかけてきた。

翌10月5日は、朝から買い物へ出かける。先ず、かつての公営質屋の流れを汲むオークションハウス・チェーンBÁV http://www.bav.hu/hu/index.phpのSzent István krt. 3.にある支店へ。ここは、B級品のヘレンド磁器などを目当てによく通っている店だ。この日もお茶入れやキャンディー・ケースなど見えないような疵のある品3点を17,100 Ft.で購入。ここでは、最終日にも見習い工が作ったという42cmの長皿や20cm径の丸皿5枚を33,000 Ft.で購入した。
この後、市電で中央市http://www.piaconline.huへ向かった。いつものようにパプリカの粉やサフランなどを1年分購入。市場の2階ではカローチャ刺繍などの民芸品が売られているが、友人の扱っている重みのあるアンティークとは違って、量産品のような印象を受けた。

 市場から戻る途中、ホテル近くの世界的生パスタチェーン店Vapiano http://www.vapiano.com/en/home/でボロネーゼとサラダの昼食。

食後、友人の店で取り置きしてくれていたカローチャのテーブルクロスを見せてもらい、ためらわず購入。いつものことながら彼が提示する“お友だち価格”をさらに10〜20%値切るという儀式を行う。
そうすると、市場で売っているものの1/3ぐらいの価格となるのが常だ。
 友人に聞くと、露店などで売っている民芸品や刺繍の多くが中国製で、仕入れ値は本物の1/10以下だそうで、卸売りの中国人市場に行くと、ハンガリー各地の民芸品が揃っており、闇市場ではヘレンド磁器の偽物まで出回っているそうだ。偽物の刺繍やレースなどが出回る一因は、本物を作る人が減っていることにもあるようだ。

友人の店では、ルーマニアウクライナのアンティーク・フォークロアも扱っているが、最近はハンガリールーマニアEUに加盟したおかげで、出稼ぎに行く若者が多く、その若者を婿にと夢見てせっせと嫁入り道具の刺繍などを編んでいた娘さん達が激減しているそうだ。友人のもっぱらの仕入れ先は、ブダペストなど大都市で亡くなったご老人達の残したアンティークやコスチュームだという。相続した若い世代は価値も分からないままに処分するとか。

夜は、ブダペストを訪れるたびに鑑賞しているオペレッタ・コンサートに。困ったことに毎回のように主催団体や会場が変わっている。今回は、英雄広場近くのBenczur Palaceを会場とする“Opera + Operetta concerts”(6,900 Ft.)http://www.operettainbudapest.com/operettainbudapest_events.htmlを鑑賞。会場は満席で東洋人は私と北京から来たという個人旅行の中国の若者1人、ほとんどがドイツ人・オーストリア人だった。

 帰りは、地下鉄のOpera駅から散歩しながらレストランを物色。満員で人気のありそうなBelvárosi Lugas Étterem http://www.etterem.hu/396で夕食。好物のロールキャベツとソーセージなどを盛り合わせた Kolozsvári töltött káposzta(1,840 Ft.)をメインに地元のシャルドネ・ワイン(3,200 Ft.)でいただく。後で、中国の若者も誘ったらよかったと後悔。

 10月6日は、朝から市民公園や王の丘を見物。ランチはまたもやVapiano でフィレ肉とルッコラを使ったタリアテッレで済ませる。
 食後ホテルに戻って昼寝。夜は、ホテルのコンシェルジュがすすめたもうひとつのジプシー・バンドが入ったレストランGundel http://www.gundel.hu/en/へ。Gundelは、1894年創業の老舗で1992 年以降はアメリカの化粧品業界大手でハンガリーにルーツを持つ Estée Lauder 家などアメリカ資本のバックアップを受けるようになったと聞く。
グンデル風グラーシュ・スープ(3,800 Ft.)とサーロインのブダペスト風(12,500 Ft.)をCsopaki Olaszrizlingという華やかな辛口白ワインでいただく。デザートには名物のGundel palacsinta(2,200 Ft.)を頼みたかったがチョコレートたっぷりのヴォリュームを思い出してためらっているとベテランのウェイターが「時代に合わせて小さくなっていますよ」と囁いてくれたので、頼むことにした。
その夜は、日本人客の姿は見かけなかったが中国人の個人旅行客が何組も居た。皆、スマートに食事をしているのを見て、業界からリタイアして長いながらもこれからの旅行業界のターゲットが見えてきた気がした。

ブダペストからウィーンに戻る10月6日は、朝のうちに、最後の買い物に出かけた。トカイの貴腐ワインEszencia(33,999 Ft.)などを購入。ハンガリーフォリントが残ったので、最後に友人の店に行ってハンガリーの壁掛けなどの民芸品を購入。
行きと違い、大荷物になったので、ホテルで良心的なタクシーを呼んでもらってKeleti駅へ。料金は、2,600 Ft.。RJ 66列車は13:10発。まだ、少しフォリントが残っていたので、列車食堂からウィーン風ハンバーグステーキのランチプレートを運んでもらって座席で昼食(2,889 Ft.)。
ウィーンMeidling駅に15:56着。この日は月曜だったので、月曜から有効なお得な1週間市内交通パスWochennetzkarte (15.8 Euro)を購入し、重い荷物を担いで地下鉄を乗り継ぎ、さらに7泊するHotel Europaに戻る。


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ハンガリー料理

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