3週間の“中欧音楽鑑賞旅行”から帰国 Part1

11月11日(成田前泊)から12月2日までの3週間のウィーンを中心とする中欧旅行に出かけてきた。今日から何回かに分けてそのレポートを記していきたい。おそらく私のことだから完結は年を越すことになるだろう。今までの例から続編を書くかどうかさえも怪しいのだが!?

初回の今日は、旅程や旅行手配の仕方、費用、旅の目的などの概要を書いていきたい。費用明細まで細かく書くのは控えようかと思ったが、これから個人旅行を計画する人の役に立つと思い敢えて詳述した。


 旅程は、長崎−東京(1泊)−フランクフルト(1泊)−ウィーン(4泊)−プラハ(2泊)−ブダペスト(3泊)−ウィーン(8泊)−フランクフルト(1泊)−機中(1泊)−東京−長崎という21泊22日間のコースだ。

利用したフライトは、本欄「ビジネスクラスを割安に利用する方法を発見」http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20150930で紹介した“JALダイナミックパッケージhttp://www.jal.co.jp/intltour/jaldp/を使った。11月12日出発・12月2日帰国で長崎発フランクフルト・ビジネスクラス往復・ホテル2泊付きが1万円のキャンペーン割引適用で263,380円だった。
 料金の内訳は、税金等が14,480円、燃油特別付加運賃が21,000円、ホテル2泊分(朝食付き)が推定2万円とすると、正味のビジネスクラス往復料金部分は207,900円程度と思われる。

ダイナミックパッケージには、正規割引運賃ほどではないが12,054マイルのマイレージも積算された。1マイルがいくらに相当するかは使い方によって諸説あるが、私は1マイル3円と評価している。
その分36,162円を前記の料金207,900円から引くと171,738円だ。台湾の中華航空など一部アジア系の航空会社が日本市場に出しているビジネスクラスの格安航空券料金とほとんど変わりがない。

1マイルがいくらに相当するかについて興味のある人は、クレジットカードの利用方法等を紹介するサイト BENRISTAの記事 「JALANAの1マイルあたりの価値はいくらなのか?」http://card.benrista.com/mile-kachi-matome/を見るとよい。

 なお、JALの機材は本欄「ボーイング787 は身体に優しい機材!?」http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20151029 で紹介したボーイング787-9の最新機材で、確かに従来の機材に比べ気圧による耳の変調や空気の乾燥は少なく、足のむくみなどもほとんど感じず、窓も大きく快適だった。

 食前酒が出されるときにキャビン・アテンダントに「機内の低い気圧では酒の酔いが地上の3倍まわるというのも、この機材なら2倍ぐらいで済みますよね」と言ったら、「そのようなご指摘を頂いたのは初めてですが、その通りかも知れませんね」と苦笑された。その後ワインや食後酒を頼む度に、なみなみと大盛りにされ、まるで最新機材乗客のアルコール耐性実験材料にされているようで、嬉しかった!?


 ヨーロッパ内の移動は鉄道を使った。当初は、チェコ・スロバキアオーストリアハンガリーの4ヶ国で有効なヨーロピアイーストパス(1等1ヶ月以内の6日間有効39,200円)か、ドイツ、オーストリアハンガリーチェコに有効なユーレイルセレクトパス(1等2ヶ月以内の5日間有効)59,100円を使うことを検討した。いずれのパスも旅程の1区間はカバーされないので、その部分は区間チケットを買い足す必要がある。

 パスの利用を考えた理由は、旅行手配開始中の9月に、中近東を中心とした避難民の人々が鉄道や駅で難渋している姿をテレビ報道などで見て、列車移動の困難が予想され、インターネットで各国鉄道に手配する列車指定・変更不可の区間割引チケットでは、臨機応変の列車や移動ルートの変更ができないと思ったからだ。

 結果的には、鉄道手配を始めなければいけない10月上旬には、避難民問題も沈静化してきたようなので、インターネットで列車指定の区間割引チケットを手配し始めた。なお、列車のほか、後述するホテルやコンサート・チケットもすべてクレジット・カードで支払った。鉄道やコンサート・チケットは利用時に支払いに使ったクレジット・カードの提示を求められることがあるので、携帯が必要だ。
実は、7月にクレジット・カード会社から「私のクレジット・カードがアメリカで不正使用未遂の形跡がある」との電話があり、カードと番号が変更され、引き落としなどの再手続きで大苦労したところだった。旅行手配を済ませた後にそのようなことがあれば大変な手間と労力がかかる。


手配を終えてみると、1等の割引チケットは、2等の正規料金とあまり変わらない値段で、1等の鉄道パスを使うよりもかなり割安になった。チケットは自宅のパソコンからプリントアウトしたいわゆるe-ticketでそのまま乗車できた。ハンガリーだけは駅の券売機に日本からの予約時に送られた紹介番号をインプットして自分で発券する手間がかかった。

 手配した列車と料金は以下の通り。所要時間7時間弱の区間が3回あるが「“ノリ鉄”には一向に苦にならない」と言いたいところだが、年齢のせいか少々きつかった。

後日レポートするが、最後のウィーンからフランクフルトへのICE特急は、予約しておいたはずの1等車両が連結されない、鈍行と同じ2等車両が4両来ただけで、すし詰め状態。しかも、ドイツ側の国境駅Passauで運行は打ち切られ、接続の列車も待っていなかった。乗員に聞いても「テクニカル・プロブレム」というばかり。他の乗客はその言い訳にまたかといった表情で苦笑するだけでクレイムをする人もいなかった。

 Passau駅でのことは、後で詳しく紹介するつもりだが(多分?)、運行打ち切りとなってすぐにしたことは、駅の鉄道窓口に行って(行った時点で長い行列ができていたが)、e-Ticketに「運行打ち切り」の証明をしてもらうことだ。今までの経験からも、列車限定の割引チケットを利用していて何らかの理由でその列車で目的地まで行けなかった場合は、責任を書面で明確にしてもらわないとトラブルの種になりかねない。30分ほど列に並んで自分の番が来ると、証明と次のICE特急の予約を申し出た。e-Ticket上には、スタンプで“Zugbindung aufgehoben”(運行継続中止)と押してもらい、ICE26号列車のケースと手書きされ、鉄道窓口のスタンプと担当者のサインがあることを確認した。次のICE特急は臨時編成なので予約不要のフリーシートだとも告げられた。ついでに、フランクフルトまでの接続時刻表をもらっておいた。初めて知ったが、ドイツ語で運行中止は哲学用語の止揚と同じアウフヘーベンなのだ。そのときは、なにやら良きことをされたような気がしてしまったが、後で考えると1等との差額はどこに消えたのだろうか?
 なお、Passauで2時間後に乗り継いだ列車はフランクフルトに行くためには途中のヴュルツブルクで乗り換える必要があった。駅で証明をもらわずに乗り換えた外国人旅行者は、ヴュルツブルクからの列車の車掌への説明に苦労していた。

ウィーンの友人に後で聞いてみると「3ヶ月ほど前から始まった難民大移動は連日一万人近くがドイツへの国境に押しかけたため、日に日にチェックなどが厳しくなり、しまいには収集がつかなくなり、旅行客も含めた全員がいったん国境で乗換えと聞いていましたが、まだそれが続いているとは知りませんでした」とのこと。どうやら、テクニカル・プロブレムではなくポリティカル・プロブレムだったようだ。両国ともEU圏内の自由通行を認めたシェンゲン条約に加盟しているため、あからさまに直通列車の運休はできないが、実際上はテクニカル・プロブレムとの言い訳で自由通行に制限を設けていたのだ。その証拠に、2時間後のウィーンからのICE特急は、やはりPassauで運行打ち切りになり、別の列車に、駅で2時間待ちしていた私たちと一緒に乗り換えさせられた。乗り換え列車は、臨時編成ということですべて早い者勝ちの自由席だった。

13 Nov Fri Frankfurt 08:19−Wien Hbf 15:12 ICE 23 €79 10,809円
17 Nov Tue Wien Hbf 11:07 −Praha15:18 RJ 74 €47 6,433円
19 Nov Thr Praha hln 09:42−Budapest 16 :35 EC 277 €38(1,049Kc) 5,252円
22 Nov Sun Budapest-Keleti 11:10 −Wien Hbf 13:45 RJ 64 €29 (9,135 Ft ) 3,974円
30 Nov Mon Wien Hbf 10:44−FrankfurtHb 17:36 ICE 26 €79 10,813円
      計€272 計37,281円   €1=137.06円

私は験を担ぐ方で、13日の金曜日に移動するのは極力避けたかったが、自分のスケジュールと聴きたいコンサートの兼ね合いで、13日を飛行機か列車のどちらかの移動日にせざるを得なかった。そこで、より所要時間の短いフランクフルト−ウィーン間の列車移動を13日にした。
 不幸なことにパリの銃撃・爆破事件が13日の夜に起き、ウィーン到着の翌日から街には緊張感が漂うようになった。


ホテルの手配は、いつものようにExpedia https://www.expedia.com/とアップルワールドhttp://appleworld.com/apl/index.htmlを併用した。朝食付きのプランが良いのだが、Expedia は中欧のホテルなどでは朝食付きのプランが少ないが、個々のホテルが設定しているキャンペーンや割引を反映しているのが魅力だ。今回のウィーンのホテルも4泊単位で割引が効くので、4泊+8泊をExpediaで手配した。アップルは日本市場に合わせた朝食付き等のプランが多いのと、リピーター割引が効くのでいつも併用している。今回は、プラハブダペストの手配をアップルに頼んだ。

11/11 成田Airport Resthouse 1泊    6,700 円
11/12 Frankfurt EXCELSIOR HOTEL 1泊 10,000円
11/13〜17 Vienna Hotel Royal  4泊   36,200円
11/17〜19 987 Design Prague Hotel  2泊 14,296円
11/19〜22 Sofitel Budapest Chain Bridge 3泊 44,280円
11/22〜30 Vienna Hotel Royal  8泊 101,876円
11/30  Frankfurt EXCELSIOR HOTEL 1泊 10,000円
計223,352円  1泊平均10,600円

今回、旅を思い立ったのは、8月になにげなく秋のウィーンなどのコンサート・スケジュールをチェックしていて、聴きたいコンサートが3週間の間に8つも集中していることに気づいたからだ。
実は、友人たちから「今年はヨーロッパの雲行きが怪しいから行かない方がいいんじゃない」と引き留められ、見送るつもりでいたのだが、コンサート・スケジュールを見て、急きょ旅行スケジュールを組み始めた次第だ。

サイモン・ラトル指揮ベルリンフィルベートーヴェン交響曲全曲演奏チクルスが11月10日から始まるが、それには間に合わないものの、最後の2日間で交響曲4番、7番、9番を聴くことができた。
このほかのお目当ては、演奏者はそれぞれ異なるがマーラー交響曲9番、5番、4番、7番の演奏会だ。また、ブダペストではオペレッタチャルダッシュの女王”も鑑賞できた。

旅行期間中のコンサートで聴き逃してしまったものがひとつある。11月21日にウィーンのコンツェルトハウスで、演奏されることが珍しいマーラー16歳の時の作品“ピアノ四重奏断章 イ短調”と哲学者テオドール・ドルノの“弦楽四重奏のための二つの作品”などの演奏会があったのだ。旅程作成中の8月にマーラーに関する中欧でのコンサートを検索したのだがその時点では演奏会のスケジュールは見つからなかった。もし見つかっていればブダペスト滞在を繰り上げて聴くことができたのだが。出発前にもう一度コンサート・スケジュールのチェックをしていれば良かったのだが。

 音楽会のチケット手配は、すべて9月〜10月のチケット一般売り開始時刻にインターネットで行ない、一部を除いて同時に入場券をプリントアウトスすることができた。ほとんどのチケットが1〜2週間前に各演奏会場の会員向けに先行発売されていたので、開始時刻であっても良い席は残されていなかった。たいていは、バルコンやガラリーの後方席になった。開始時刻の手配を怠っていたら、おそらくほとんどのチケットが事前入手できず、旅行も諦めていただろう。
 結果的には、現地ではほとんどのコンサートのチケットがプレイガイドなどで入手可能で、中には当日会場で入手できるものもあった。
 しかし、昔に比べ料金が高くなったものだ。もっとも、これらのオーケストラが来日公演したときには3〜4倍にはなるだろう。

●13 Nov Fri Musikverein: Berliner Philharmoniker Beethoven Symphonie Nr.4&7 Simon Rattle  €65 8,866円
●14 Nov Sat Musikverein: Berliner Philharmoniker Beethoven Symphonie Nr. 9 €65 8,866円
●15 Nov Sun Musikverein: Lucerne Festival Orchestra Mahler Symph. Nr. 5 €76 10,371円
●16 Nov Mon Konzerthaus: Vienna Philharmonic Orchestra Mahler, Symphony no. 9 €127 17,926円
●18 Nov Wed Rudolfinum: Czech Philharmonic Orchestra Mahler, Symphony no. 4 750Kc 3,841円
●19 Nov Thr Budapesti Operettszinhaz Emmerich Kalman Die Csardasfurstin 3600 Ft 1,614円
●27 NOV Fri Musikverein: Wiener Philharmoniker Strawinsky Symphonie de Psaumes,
Schostakowitsch Symphonie Nr. 10 €44 6,059円
●28 NOV Sat Musikverein: Vienna Symphony Orchestra Mozart, Piano Concerto no. 23 K488,
Mahler Symphony no. 7 Adam Fischer, Conductor €52  7,159円
計64,702円

音楽鑑賞以外の目的としては、3都市の古い友人に会ったり、毎年行くたびに行っている自分が書いたウィーンに関する本やその派生本の記事内容の変更点チェック(こちらは、仕事と言うより趣味の領域だ)、そして、日本では買えない食材類・食器・書籍・CDの買い出しがある。もう一つ忘れてはならない目的があった、11月11日に解禁されるウィーンとその周辺で造られる新酒(ホイリゲ)を味わうことだ。

ウィーン 旅の雑学ノート―ハプスブルクの迷宮を極める

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ウィーン旧市街 とっておきの散歩道 (地球の歩き方GEM STONE)

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