デジタルテレビ向けブロードバンドポータル構想

 ブロードバンド利用を前提とした動画や音声ガイド(iPodなど)、デジタル・マップのようなリッチな旅行コンテンツを旅行会社が単独で運営することは技術的にも財政的にも困難である。そこで、IT関連異業種との大胆な合従連衡が起きるのは必至だろう。実際に、JTBは、光ファイバーTEPCOひかり東京電力吉本興業のコラボレーションサイト「キャスティ」上で、「旅の情報を24時間オンエアで届ける新感覚双方向番組」“JTBチャンネル”http://casty.jp/jtb/を開設した。
 一方、SONY、松下、東芝、日立シャープはブロードバンド接続機能を持つ双方向デジタルTVのポータルを共通化することで2月初めに合意し「DTVポータル検討ワーキンググループ」を結成したと発表した。松下の2月3日付けプレスリリースhttp://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn060203-1/jn060203-1.htmlでは、図解を添えて「ブロードバンド接続機能を有するデジタルテレビの普及拡大に伴い、インターネットを利用した各種の情報やビデオ・オンデマンド等のサービスが提供されつつあり、デジタルテレビは、リビングを中心に生活の様々なシーンにおいて、このようなサービスへの安心で便利な窓口として期待されていますが、現状では提供されるサービスがデジタルテレビのメーカーや機種に依存するなどの制約があります。家電機器にとっては、ユーザーが分かりやすく簡単な操作で生活に必要な各種のサービスを必要な時に享受できること、かつ、多くの関連事業者の参入が容易であることが求められます。その実現のために、当ポータル検討ワーキンググループは、デジタルテレビのネットワークへの入口であるポータルを共通化し、デジタルテレビのメーカーや機種に制約されることなく、幅広いサービスを安心・安全・便利に利用できる仕組みとして、デジタルテレビ向けのポータルサービスが必要と考えております」と構想を語っている。
 このサイトは、すでに松下主導のT-navi http://tnavi.net/index.htmlが行っているような旅行商品も含めたeコマース販売をより広範囲・高機能に展開していくことになるだろう。
双方向性を持つデジタルテレビの統合ポータル構想が実現すれば、ニュース・天気予報・緊急警報などの生活情報はもとより、日常のショッピングや出前、旅行手配、株式取引、ビデオ録画予約、健康相談、通信教育、カルチャースクールなど生活に関連するあらゆる活動の玄関口となる可能性を秘めており、既存のポータル・サイトの地位を脅かすことになるだろう。
なお、「DTVポータル検討ワーキンググループ」の検討の成果はこの秋に開催される映像・情報・通信の国際展示会CEATEC JAPAN(シーテックジャパン)http://www.ceatec.com/ja/2006/などの機会を通じて、広く公開していくという。
さて、今日の新聞紙面にデジタルテレビ関連で関心を持たざるを得ない記事が載っていた。それは、ブラウン管並みの応答性、色再現性を厚さ10ミリ程度の薄型テレビで可能にするという、ブラウン管と薄型フラットパネルディスプレイの長所をいいとこ取りしたような次世代ディスプレイSEDSurface-conduction Electron-emitter Display表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)の発売が、当初予定の今年の春から、来年の末へ延期されるというニュースだ。東芝キヤノンが提携して開発に当たっているものだが東芝のプレスリリースhttp://www.toshiba.co.jp/about/press/2006_03/pr_j0801.htmによれば「薄型テレビの市場は、今後も高い成長が期待され、特に2008年以降、北京オリンピックの開催や、世界的にデジタル放送への完全移行が進むことにより、本格的な需要の拡大が見込まれています。こうしたことから、SED搭載テレビの販売ターゲットを、2008年の北京オリンピック商戦と定め、商品投入を進めていきます」とある。しかし、実際には、プラズマや液晶デジタルテレビの、技術革新が目覚ましく進んでいることと価格下落が急速に進んでいるのに対して、SED陣営は量産化技術の確立に手間取り十分な数量の確保と市場が受け入れ可能な価格設定が難しからというのが本音のようだ。
当欄の昨年6月23日付の記事http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20050623にも書いたが、液晶のフルハイビジョン対応テレビとブラウン管型テレビを見比べたら、明らかにブラウン管型の方が映像が美しく見えた。個人的には量産によるコストダウンで、SEDが手の届く価格になるまで買い控えようと思っていたが、つなぎにブラウン管型フルハイビジョン・テレビを買いたくなった。と思って、先月まで17万円前後で売られていた東芝の36DX100という機種をKakaku.com http://www.kakaku.com/でチェックしてみたら売り切れだった。それどころか、他のメーカーのものも36インチ・タイプは全滅。事情通に寄れば、新たに36インチブラウン管型フルハイビジョン・テレビが市場に出されることは望み薄だという。どこかが、この成熟商品であるブラウン管型フルハイビジョン・テレビを発売してくれれば飛びつくのだが。これでつないで、商品化のめども立っていない、走査線4000本級・超高精細映像システム“スーパーハイビジョン”の登場まで待ってみるのもよいのかも。

夢のスーパーハイビジョンに挑む

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