ミュージカル“アルハンブラアメリカンホテル”

 今日はちょっと個人的なお話しを書かせていただく。子供の頃、長崎市松が枝町にあった40番館と呼ばれる洋館に住んでいたことがある。昔、曾祖母が大正から昭和の初めにかけてここで欧米から来る船の高級船員や商社マン相手に1階がバー、2階がホテルという西部劇でおなじみのサロン・スタイルのアルハンブラアメリカンホテルという名の宿を開いていた縁だ。幼児体験のせいか、外国を旅していても旧市街の中心でこの種の宿を見つけ出しては泊まり歩いている。街の中心という地の利に恵まれているばかりでなく、1階のバーで異国人同士が夜遅くまで酌み交わしたり、付近の大衆的なレストランを食べ歩いたり、朝市や物売りの声で目覚めたりといった数々の魅力に溢れているからだ。
 それに、秘密めいた界隈で世を忍んで隠れ棲んでいるかのような“非日常”感覚も味わえる。気まぐれな旅人にとっては、フラリと飛び込んでも部屋が見つけやすく値段も安いというのも有り難い。
嬉しいことに、この“アルハンブラアメリカンホテル”が長崎市民の手でミュージカル化され、3月13日と14日に渡って長崎の2千人以上入るブリックホールを満席にして上演された。もちろん、見に行かせてもらった。出演者だけでも102人、3時間半に及ぶ大作で、全編に流れる素晴らしい音楽もこのミュージカルのために作曲されたもので、フルオーケストラで生演奏された。驚いたことに脚本家の方も演出家の方もこのホテルについてはほとんどご存じないはずなのに「1階のバーで異国人同士が夜遅くまで酌み交わし」、「秘密めいた界隈で世を忍んで隠れ棲んでいるかのような“非日常”感覚」の雰囲気が実によく再現されていた。
アルハンブラアメリカンホテル追想http://www1.city.nagasaki.nagasaki.jp/brick/jigyo/hosimegane.html
☆右上はアルハンブラアメリカンホテルで昭和初期に撮られたミュージカルの主人公のモデルとなった大叔母ルイザを中心とする写真