気になる言葉“デジタル・コンバージェンス”

 マルチメディア・インターネット事典http://www.jiten.com/dicmi/index.htmによれば、“デジタル・コンバージェンス(digital convergence)”とは、「さまざまなメディア・データをデジタル技術によって一体化していく行為の総称」となっている。自分流に勝手な言い換えをすれば、「コンピュータと家電、放送と通信、出版と新聞、通信教育と学校教育、旅行業と旅行情報産業など異なると思われていた多様な産業分野が、デジタル技術の進展によって垣根が取り払われ融合し、全く新しい姿の産業へと収斂(コンバージェンス)していく過程の総称」だろうか。

デジタル・コンバージェンスについてどのようなことが語られているかは「はてなブックマーク」の「Digital Convergence」を含む注目エントリーhttp://b.hatena.ne.jp/t/Digital%20Convergenceを見てみると、「テレビとネットの近未来カンファレンス報告」、「Yahoo!がテレビにやってきた〜Yahoo! Go for TVベータ版発表」、「デジタル家電は今後,Webサービス型になる」といった記事がずらりと並んでいる。
 JMR生活総合研究所http://www.jmrlsi.co.jp/index.htmlが開催するマーケティング実務者のためのフォーラム「NEXT VISION 2006」などでも、デジタル・コンバージェンスの動きに注目しているようで、「デジタルコンバージェンス時代の新しい競争優位づくり−プラットフォーム戦略」http://www.jmrlsi.co.jp/menu/mnext/d03/2005/nv2006_04.html、「産業融合による情報家電産業の時代−デジタルコンバージェンスが変える産業と戦略<前編>」http://www.jmrlsi.co.jp/menu/mnext/d03/2005/dcvn_1.html などの記事をウェブ上で見ることができる(記事全編を見るためには有料の会員登録が必要)。

私が“気になる”のは、デジタルハイビジョンテレビを見るようになって、インターネットに繋がるデジタルテレビが生活空間の中枢に入り込んでくるだろうことを痛感しているからだ。それは、ハイビジョン放送が高精細な美しい映像を届けるばかりでなく、ブロードバンドとの相乗効果でショッピングや芸術・スポーツ鑑賞、趣味・嗜好の充足など暮らしに関わる多様な側面で劇的な展開を示し始めているからだ。
 当欄の「デジタルテレビ向けブロードバンドポータル構想」http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20060309で書いたが、「双方向性を持つデジタルテレビの統合ポータル構想」はさらに一歩進んで、「松下電器産業ソニーなど家電大手5社は2007年度中に、インターネットに接続する規格を共通化した高機能の『ネットテレビ』を発売する」との発表があった。詳しくはNIKKEI NET の「ネットTV 07年度に発売、松下など5社統一規格で」http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=AS1D0109S%2002082006の記事を参照していただきたい。

「ネットテレビ」の先駆けとして、「リビングルームのソファなど、テレビから離れた場所でもブラウザーを快適に操作。画面のズームやスクロール、ポインティング、クリックなどの操作をリモコンでスムーズに行える」SONY VAIOV GX-XL71S http://www.vaio.sony.co.jp/Products/XL2/やシャープの「パソコン機能を融合させ、高画質でハイビジョン放送が視聴できるのはもちろん、リモコン操作で視聴中のテレビ番組のホームページをすばやく表示し、番組に関連した商品をその場でインターネット購入できるなど、テレビの新しい用途が拡がる」という“インターネットAQUOShttp://www.sharp.co.jp/i-aquos/などの製品も既に発売されている。

 一方、NTTコミュニケーションズは、インターネット接続機能を備えたデジタルテレビ向けに、生活情報の提供やショッピングができる無料ポータルサイト「DoTV」(ドゥー・ティー・ビー)http://dotv.jpを開設した。トップページの「旅行」からはJTBのオンライン宿予 約サービスと連携し、テレビから宿泊予約が行なえる。

 「双方向性を持つデジタルテレビの統合ポータル構想」と「高機能のネットテレビ」が実現すれば、ニュース・天気予報・緊急警報などの生活情報はもとより、日常のショッピングや出前、通学児童の安全管理、旅行手配、株式取引、ビデオ録画予約、健康相談、遠隔医療、高齢者介護、通信教育、カルチャースクール、ホーム・セキュリティ、ホーム・バンキングなど生活に関連するあらゆる活動の玄関口となる可能性を秘めており、既存のポータル・サイトとオンライン販売も含めた商品流通ルートの地位を脅かすことになるだろう。

 なお、「DTVポータル検討ワーキンググループ」の検討の成果はこの秋に開催される映像・情報・通信の国際展示会CEATEC JAPAN(シーテックジャパン)http://www.ceatec.com/2006/ja/visitor/などの機会を通じて、広く公開していくということを前記記事で書いたが、CEATECのリニューアルされたホームページを見るとサブタイトルが「デジタルコンバージェンスが変える、社会・生活・ビジネス」に変わっていた。

デジタル・コンバージェンスの衝撃

デジタル・コンバージェンスの衝撃