ノスタルジック・ジャーニー・オン・ザ・ウェッブ

ヨーロッパを最初に旅行したのは1974年のことだった。物持ちのよい方なので当時使ったトーマス・クック時刻表とユーレイル・パスを今でも保存しているが、時刻表を見ると国境での停車時間が今よりも長かったことが分かる。TEEと呼ばれる懐かしい欧州横断特急を除いて、国境での検査は停車して行うのが原則だったのだ。ところが、今は、EU加盟国の中でも税関検査を廃止した10数カ国の間ではパスポートの検査もなく、いつ国境を通過したのか気づかないほどだ。
 さらに、ドーバー海峡トンネルを通り抜けるユーロスターの開通や新幹線網の展開にも目をみはる。イタリア新幹線はいつの間にか、チューリッヒジュネーヴなどに乗り入れているし、フランス新幹線もミラノやツェルマットの入り口のブリークにまで伸びている。列車食堂の料金表示もEUROが基本となっており、今まで、分かりにくかった国際線の料金もEUROで比較すれば一目瞭然だ。
 1974年当時と違い便利になったのは時刻表である。今では、トーマス・クック時刻表の日本語版が年に4回出されており、英語版にない主要駅の構内図や日本語の各国別案内まで追加されている。意外に思われるかもしれないが、このような時刻表を素人で読みこなせるのは日本人だけだそうだ。そう言えば、トーマス・クックを持って旅する欧米人を見たことがない。
 さらに時刻表には革命的な出来事が起こった。無料で活用できるインターネット電子時刻表の登場である。ほとんどの国の電子時刻表には英語版もある。一番使いやすいのはドイツ鉄道の電子時刻表で、インターネット版のほか日本語解説付きのCD-ROM版も一部の書店で売られている。
31年前の旅日記やユーレイルパス、トーマス・クック鉄道時刻表、飛行機の搭乗券、ホテル代の領収書なども大切に保存してあるので、インターネットを使えば、かつてたどった鉄道路線や泊まったホテル、通ったレストラン・バー、観光スポットなどをウェブ上でヴァーチャル旅行して甦らせることができた。
 ノスタルジック・ジャーニーを楽しむために役立ちそうなサイトをいくつか紹介しよう。The Trans Europ Express http://homepages.cwi.nl/~dik/english/public_transport/TEE/ は、今はなくなったノスタルジックなヨーロッパ横断特急(TEE)ファンのページで、「ラインの黄金」、「青い鳥」など懐かしいニックネーム付きの名物列車を振り返ることができる。
 ポルトガルのホテルラベル収集家「マヌエル・ミモーゾ氏のホームページ」http://www.tabacaria.org/ は、貴重なコレクションを紹介しているサイト。Hotel Luggage Labelのページには、アール・ヌーヴォーアール・デコ期の美しいホテルラベルが多数紹介されており、サイトを見て回るだけでも世紀末の豪華ホテルの雰囲気が満喫できるだろう。ラベルは、Index of pages on labels から時代、様式、印刷業者、アーティスト、テーマ別で見ていくと分かりやすい。ゴルフや航空機などをテーマとしたページも興味深い。History and stories of classic hotels のページもお見逃しなく。
 Airliners.net http://www.airliners.net/は、スウェーデンのLundgren Aerospace International社が運営する世界最大の航空機写真データベースだ。Aviation Photo Search Engine機能を使い、機種、航空会社、撮影地、運航形態、キーワードで70万枚もの写真を検索することができる。右フレームのAircraft Data & Historyには機種毎のデータや機内写真、座席配置例などの情報が網羅されている。古き良き日の航空機を集めた左フレームのClassic Airliners からは、今はなくなった航空会社の機材を見つけることもできる。
英語のサイトでは、ロサンゼルスからシカゴまでを走っていた未だに人気の根強く、テレビ・ドラマのタイトルにもなった“Route 66”のファンのためのリンク集http://www.geocities.com/Hollywood/Studio/8290/kicks.html がある。ルートの保存運動やノスタルジックなグッズの販売を行っているサイトまである。アメリカのドライブ全般ではRoad Trip Links http://www.geocities.com/Hollywood/Studio/8290/links2.html も見逃せない。
☆写真は、1974年2月のトーマス・クック時刻表と21日間有効のユーレイル・パス

ヨーロッパ汽車の旅 (コロナ・ブックス)

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