秋のウィーン22日間の旅 その5 「ウィーン」

*[海外旅行]  秋のウィーン22日間の旅 その5 「ウィーン」

楽友協会近くのブラームス



10月13日(金)旅行開始から9日目  ウィーン

 

   昔からの習慣というか験担ぎで、13日の金曜日は、極力外出を控える主義だが、この日は遠出を控え、チケット購入済みのオペラ鑑賞などで過ごした。    

   この日は、私にしては早めの06:45から朝食をとった。早起きしたのは、9:30 より、10月21日と22日のウィーン・フィル定期演奏会の残席が販売されるからだ。
 朝は、目覚まし時計に頼るまでもなく、睡眠中の05:45に長崎中央郵便局から携帯に電話が入ったので、予定より早く起きることになった。郵便局からの電話は、“「不在届」を受理していたにもかかわらず手違いでポストに投函してしまった”という内容だ。郵便局は、海外旅行中とは知らず、電話したようだが、海外での着信料金(1分当たり110円)は当方負担となった。

 「その1」でも書いたが、日本から手配できた7回のコンサートのほかに、終身会員への事前販売が原則の10月20日ウィーン・フィル定期演奏会(指揮Tugan Sokhiev、ピアノLang Lang“Saint-Saëns: Konzert für Klavier & Orchester Nr. 2 、 Prokofjew: Symphonie Nr. 5 ”のチケットは現地で入手することにしていた。

  ウィーン・フィルの日本語ホームページhttps://www.wienerphilharmoniker.at/ja/に「本公演のチケットが返却された場合に限り、2023年10月13日(金)の 9:30 より、電話、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のチケットオフィスにて、およびオンラインで販売致します」と書かれていたので、この日の09:30 にケルントナー・リング通り12番地にあるウィーン・フィルのオフィスに行ったところ、私の前には1人しか並んでおらず、72ユーロでバルコン席の前から2列目中央の良い席を買うことができた。

   ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のチケットオフィスの土産物コーナーで、ついでに19世紀風のオペラグラス(実用性はほとんどなかった)€15、Moleskin社製のウィーン・フィルの手帖€18.9などを購入。

   ここから市電に乗って、ウィーン大学に向かう。ここでも購買部に立ち寄ったが、かつて品揃えが良かったCD(昔はLPも)は、置かれなくなっていたので、絵はがきや布製のエコバッグ€5を買うにとどめた。

 次に、大学の斜め向かえにある、昔、Creditanstalt銀行の本店があった1912年に建てられた宮殿のような建物に向かった。この建物が改装されてINTERSPAR am Schottentor   https://www.interspar.at/schottentorという高級スーパーになっているという新聞記事を読んだからだ。
   ウィーンに住んでいた1970年代半ばには、知り合いがこの銀行に勤めていたこともあって、ここで口座を作って何度か通ったことがあった。
   中に入ると、宮殿のような重厚で広々とした空間が、見事に高級スーパーに変貌していた。許可を得て、写真も撮らせてもらった。
   ついでに、昼食代わりの小さなにぎり寿司セット€8.99、グリーンサラダ€4.29、Muskateller種の白ワイン€10.99などを購入。
   買い物をしていて思い出したが、1855年ロスチャイルド男爵により設立されたCreditanstalt銀行は、1931年5月に破綻し、その余波がドイツ、フランス、英国へと及び、ヨーロッパにおける大恐慌の発端となった銀行でもあった。

      

INTERSPAR am Schottentor の店内

   12時過ぎにホテルへ戻って、昼寝のあとにぎり寿司とサラダの昼食。18時過ぎに部屋を出て地下鉄で2駅のオペラに向かう。
   演目は、プッチーニの三部作(Il trittico )。これは、彼の作曲した3つの一幕物オペラ、「外套」、「修道女アンジェリカ」、「ジャンニ・スキッキ」を一夜で連続して上演するという演目だ。「その2」で、書いたようにこの演目は、ウィーンへ向かう機内エンターテイメントで3時間にわたるザルツブルク音楽祭での上演を鑑賞して予習済みだった。
   オペラ座のチケットは日本からオンラインで購入してあった。席は、Galerie Mitte links, Reihe: 1, Platz: 34 という3階席中央左側1列目で料金は €122だった。コンサートのプログラム同様オペラ座のプログラムも値上がりしていて€ 5.8だった。チップ0.2を加えた€6を渡した。
 オペラの終演は22:45 。周辺のレストランはほとんどがラストオーダー 終了となっていたので、仕方なくというか性懲りもなくというか再びKarlsplatz-Opera駅にあるマックで、グルテンフリーのMcF1rst Beef € 4.9とBacon Hamburger Royal mit Käse € 5.2をテイクアウト。ホテルの部屋で買い置きのグリーンサラダとワインと一緒に夕食。01:00頃に、アルジャジーラのニュースを見ながら就寝。

     

Hotel Indigo 122号室から見る公園の眺め  

 


10月14日(土)旅行開始から10日目  

   この日の朝は、ホテルの裏手にある公園Willi-Frank-Parkを散策してから歩いて蚤の市に向かう。公園の名前は、第二次大戦中に戦死した抵抗運動の闘士Willi Frank氏を記念してつけられたようだ。   
 

公園側から見たHotel Indigo     

 公園から10分ほど歩いて、土曜日恒例の蚤の市が開かれているKettenbrückengasse駅周辺に向かい、蚤の市https://www.stadt-wien.at/wien/maerkte/flohmaerkte-wien.htmlを見物。昔は、友人達を誘い合ってここで不要品を売る店を開いたこともある。当時の出店者の半分ほどは素人の不要品販売で、客とのやり取りを楽しむ一種のリクレーションだったが、最近はアンティーク業者などプロが増えているようだ。
    

ウィーンの蚤の市

   蚤の市の近くにあるオットー・ワーグナーが設計したマジョリカハウス、メダイヨン館などのアール・ヌーヴォー建築を眺めた後、生鮮食品市場Naschmarkt  https://www.wien.info/en/dine-drink/markets/naschmarkt-353536に向かう。この市場では、日本名がそのまま通じる果実などもある。ミカンはSatsumaと呼ばれている。幕末に薩摩藩がパリ万博に展示物として持ち込んだのが始まりのようだ。二十世紀梨はNijisseiki、カボチャはHokkaido、柿はKaki、鮪の大トロはO-Toroと書かれている。
   Naschmarkt市場を抜けてKarlsplatz駅から地下鉄に乗り、ホテルの最寄り駅Pilgramgasseに戻り、スーパーBillaで、昼食代わりにハーブを練り込んだウィーン風ハンバーグの辛口Pikante Fleischlaibchen を丸いSemmelパンで挟んでもらう(€3.11)。ほかにSatsumaを1キロ€2.49、グリーンサラダ、牛乳€1.09などを購入。

 

薔薇の刺青を思わせるマジョリカハウス



    

Hokkaido(北海道)と書かれた日本種?のカボチャ

   ホテルの部屋で昼食をとった後、再度近所のSchlossquadrat  https://www.schlossquadr.at/?lang=enと呼ばれる一角に散歩に出かけた。Schlossquadrat とは方形城塞といった意味で、14世紀に城壁で囲まれた出城のような一角があったことに由来するようで、21世紀に入ってから4軒のレストランを中心に一帯のブランディング戦略が開始され、古い佇まいを維持・再現しながら、ハーブガーデンや中庭の整備、古い建物を活かした賃貸住宅造り、地ビールの商品開発などが進んでいるようだ。

   帰国後に、ウィーン市観光局から配信されたメールマガジンに「グレッツェル(Grätzel)」https://b2b.wien.info/en/newsroom/pressservice/ja112023-heartbeat-streets-neighborhoods-479644という特集記事があった。「Heartbeat Streets - ウィーンのグレッツェルに恋する」という副題の付いた特集では、以下のような紹介があった。

 “近年注目を集めるウィーンの住宅街。地元住民が「グレッツェル(Grätzel)」と呼ぶこれらの地区は、人々の出会いと交流と創造の場といえます。2024年、ウィーン市観光局は「多様性」と「多文化共生」、そして「本場感」をテーマとするスローガン『Heartbeat Streets - ウィーンのグレッツェルに恋する』を掲げ、観光地とは異なる趣をもつグレッツェルにスポットを当ててウィーンの魅力を紹介します”とあり、“複数の通りから構成される市街地の小さな単位をウィーンでは「グレッツェル(Grätzel)」と呼びます。同様の概念をベルリンでは「キーツ(Kiez)」、ニューヨークでは「ネイバーフッド(Neighborhood)」、マドリードでは「バリオ(Barrio)」と呼びます。グレッツェルの語源は「周辺」を意味する古語「ゲライツ(Gereiz)」で、グレッツェルの多くは、現在のウィーン1区に相当する旧市街の周辺に形成された集落から発展したものです。通常は市場や広場を中心に何本かの通りが伸びてグレッツェルを形成していますが、ウィーンのグレッツェルが他都市と違う点は、ほとんどの場合正式な境界線がなく、始まりも終わりも存在しないところです”と紹介されていた。
   記事では、“2024年注目の個性豊かな11のグレッツェル”が紹介されていたが、残念ながらこのSchlossquadratは選に漏れたようだが、ここも“人々の出会いと交流と創造の場”と言う意味ではグレッツェルと呼ぶにふさわしいだろう。

   Schlossquadratにある4つのレストランの中で、散歩中に心引かれたのが美しい中庭のあるSilberwirt https://www.silberwirt.at/?lang=enというウィーン料理のレストランだった。営業時間外だったが中を覗いてみると、雰囲気も良さそうなので「今晩予約できますか」とスタッフに聞くと、「残念ながら予約でいっぱいです」と断られた。
 諦めきれずに、部屋に戻ってからSilberwirtのホームページを開いてみると、大変分かりやすい予約のページがあった。試してみると、19:30の予約枠が空いていたのですぐに予約を入れた。コロナ前のオーストリアでは、ウェブ上の予約システムが分かりにくく、とくに必須の連絡先に日本の携帯番号を入れるのが難しかったが、ここのシステムは日本の携帯番号も日の丸マークのロゴが選べて簡単に予約できた。後で、ウィーンのほかのレストランのウェブ予約も覗いてみたが、多くの店がここと同様、外国人旅行者にも利用しやすいように改善されていた。

   夜は、Schlossquadrat周辺を散策しながら、19:30に入店。チーズ添え夏のグリーンサラダ(Sommer Blatt Salat €14.9)を前菜に、メイには、Hokaido(カボチャ)のマリネに羊のチースボールや干しイチジクをのせた料理€12.9にしようか迷ったが、結局、大好物の挽肉や野菜を炒めたものを網状に焼いたポテトでくるみ、ガーリッククリームを添えた料理(Silber's Erdäpfeldatschi Faschiertes Knoblauchrahm €15.80)を選んだ。ワインはWachau地区の白Grüner Veltliner „Federspiel Rossatz" €32。デザートはウィーンの森のベリー類を盛ったアイスWild Eis €5.9をオーダー。料理もワインも店の雰囲気やサービスも大満足の一夜だった。ほろ酔い加減で散歩しながら21:30にはホテルへご帰還。
    

夏のグリーンサラダ



挽肉や野菜を炒めたものを網状に焼いたポテトでくるんだ料理 



         


10月15日(日)旅行開始から11日目  ウィーン

 この日は、午前中は、ホテルでノンビリと過ごし、正午前から外出。地下鉄を乗り継いでウィーン大学まで行き、そこから市電に乗り継ぎ2駅目のLangegasseで下車。すぐ近くのAlserkirche http://www.pfarre-alservorstadt.at/という教会を訪ねた。
   この教会は、鐘の献納式典曲はシューベルトにより作曲され、ベートーヴェンの葬儀も執り行われたという由緒ある教会だ。実は、この教会に隣接する僧院が昔、学生寮になっていて私も2年近く住んだことがある。
   僧院だっただけに、各部屋は厚い石の壁で囲まれていて、2つ隣の部屋のチェリストの友人が練習する音がまったく漏れてこなかったことを覚えている。
   また、教会の回廊には第二次大戦のロシア戦線などで亡くなった人のプレートや無事に帰還できた人の神に感謝するプレートがずらりと並んでおり、それを読み解いて回るだけでも歴史の勉強になった。

 この教会に関する日本語の案内が、「ウィーンの街を公認ガイドと歩いてみませんか」https://www.wien-kanko.com/というホームページの「ウィーンこぼれ話のコーナー」の2016年3月の項に「ベートーヴェンの葬儀が行われたAlserkirche (アルサー教会、三位一体教会)」という記事があるので、興味のある方はご覧いただきたい。https://www.wien-kanko.com/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%93%E3%81%BC%E3%82%8C%E8%A9%B1/2016%E5%B9%B43%E6%9C%88/

   

Alserkirche 教会    

   教会見学の後で、市電地・下鉄を乗り継いでドナウ運河に面したSchwedenplatz駅に向かった。ウィーン最古のRuprechtskirche教会やその周辺の旧ユダヤ人居住地区で現在はバーミューダ・トライアングルと呼ばれる一帯を散策。バーミューダ・トライアングルの名の起こりは、1980年代の初めに、伝統的なカフェが並ぶウィーン旧市街には珍しく、3軒の若者向けのカフェ・バーが誕生し、その三店舗がなす三角形の周辺に、序々に、新規開店や伝統的な店が若者向けの店に改装したりして店が増え始めた。ドイツ語でも酔い潰れることを「沈没」と表現することもあって、いつとはなしに若者が遭難するバーミューダ・トライアングルと呼ばれるようになったというわけだ。

    

Zwölf-Apostelkeller 外観

   15:00頃に、ホテルに戻り、いつものようにグリーンサラダとグルテンフリーのパンなどで遅い昼食をとり、その後、入浴と昼寝。
   16時過ぎに、ホテルを出て再び地下鉄でSchwedenplatz駅へ向かう。今宵は17時から、ウィーンでの友人たちとのもうひとつの恒例行事である、旧市街の16世紀のバロック建築の地下深くにあるワインケラーStadtheuriger Zwölf-Apostelkeller(街中のホイリゲ 十二使徒ケラー)http://www.zwoelf-apostelkeller.at/での飲み会だ。
 最初にこのケラーに来たのは1974年のことだから50年近く前になる。メニューは暗記しているので、牛タンのスライスに西洋わさびを添えたもの(Zunge mit Kren )や卵入りのお団子をスライスして炒めサラダを添えたもの(Eiernockerln mit grünem Salat €12.9)、野菜のパイ生地包み焼きハーブソース添えGemüsestrudel mit Kräutersauce 14.9)、仔牛のウィナー・シュニッツエル(24.9)などをメニューを見ないで頼もうとしたが、残念なことに一番のお目当ての牛タンがないと断られた。メニューを見ると、確かになくなっていた。良質の牛タンが手に入らなくなったからだそうだ。

   10年ほど前から、この店のグラスワインが美味しくなくなってきているので、最近は、値段に大幅な違いがないボトルワインを中心に楽しんでいた。
   値段と言えば、ツマミもワインも2019年の秋に比べ大幅に値上がりしていた。2019年には、上記の野菜のパイ生地包み焼きは8.9、ウィナー・シュニッツエルは19.9だった。1/4㍑のグラスワインは3.9だったものが5.9に。“値段に大幅な違いはなかった”はずのボトルワインは20.9前後だったものが32.9に値上がりしていた。
   この日店を出たのは21時頃だったので、4時間も長居をしていたことになる。ノンアルコールの友人の運転でホテルまで送ってもらった。

Gemüsestrudel mit Kräutersauce    

   続きの、「10月16日(月)旅行開始から12日目」以降は、5月末に書く予定。「長崎日記」は、なんとか5月中旬には更新したいと考えている。


   最後に、最近の円安の進行についてふれておきたい。上記のウィーンの店では、2019年からの4年間で3~5割の値上がりだったが、1ユーロは2019年11月当時約123円。今回の2023年10月の旅では、約169円だった。円は30%ほど安くなった計算だ。現地のインフレ分と合わせれば、支出項目にもよるが、現地での出費は円換算では50%以上増えたことになる。

   当ブログの2022年6月30日の記事 https://europedia.hatenablog.com/entry/2022/06/30/164554の末尾に、「米ドルは、2022年年初115円だったが、6月30日16:00現在では約136.4円。半年で、16%ほど円安が進んだことになる」「多くの国民は、日本円建てでしか現・預金を持っていないだろうから、米ドル換算で(つまり、ほぼ国際基準で?)自分の資産が16%も価値を損じていることに気がついていないのではないだろうか」と書いた。

   その記事から1年も経たない、2024年4月29日の朝には対ドルで、円安は、160円まで進んだ。2022年年初の115円に比べ30%ほど円安となった計算になる。上記のたとえで言えば「自分の資産が30%も価値を損じている」ことになる。
   為替介入があったようで、4月30日の午後には、156円台後半まで戻しているようだが、欧米各国と違い、金融緩和が継続されるようなので(日本円の刷りすぎで?)、中長期的にはさらに円安が進むのではないだろうか。

 

今回の旅程

●2023年10月4日(水)~10月25日(水)「秋のウィーン・ブダペスト22日間の旅 その1 」オーストリア航空  長崎→成田 ジェットスター(成田1泊)→成田 オーストリア航空→ウィーン(4泊)→ブダペスト(3泊)→ウィーン(12泊)オーストリア航空→成田→ジェットスター→長崎


■今日のブックマーク&記事■

□丸の内に「ホイリゲ」がやってくる!~~オーストリアワインイベント~
  https://www.marunouchi.com/pickup/event/2826/

□Eurail.com 「直前でも間に合う旅 - 予約は不要!」
  “How to travel in Europe without a plan ”
  https://www.eurail.com/ja/plan-your-trip/trip-ideas/last-minute-trips-no-reservations 

□TRVLWIRE 4月8日記事
 「もう来なくて結構!」オーバーツーリズム対策が世界中で課題に
  https://trvlwire.jp/?p=35799
 
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