メルヘンの世界へ誘う“ヨーロッパの街道を往く”

 ヨーロッパには、ローマ帝国の軍道や交易の道を源とする数多くの街道が昔のままに残り、古き良き日の面影を伝えている。各国の政府観光局は、これらの街道や新たな観光振興ルートを積極的にプロモーションし、訪れる旅行者に便利なように日本語のパンフレットや地図、ホームページで誘致を図っている。
また、街道沿いには宿泊施設やインフォメーション・センター、観光スポットも整理されており、個人旅行者でも戸惑うことは少ないだろう。
代表的な街道はドイツのロマンチック街道と古城街道だろう。ロマンチック街道は、かつてのローマの軍道の跡をたどるものだが、観光ルートとして整備され
ロマンチック街道の名が知られるようになったのは戦後のことだ。
アメリカの進駐軍がフランクフルト周辺を中心に駐屯し、その休暇時の慰安のためにロマンチック街道が整備されたのだ。そう言えば、10数年前にフランクフルト駅からロマンチック街道を南下するヨーロッパバスに乗ったとき、わざわざ北上して米軍基地に立ち寄ってGIを乗せていたのを思い出した。
ドイツ政府観光局日本語ホームページhttp://www.visit-germany.jp/の「旅の目的」から「街道の旅」を開くと、ロマンチック街道を始め、ゲーテ街道、古城街道、アルペン街道、エリカ街道、ファンタスティック街道、メルヘン街道のページが設けられている。
試しに、ロマンチック街道のページを開くと、全ルートの地図とともに、ロマンチック街道協会ホームページ(英語)http://www.romantischestrasse.de/やヨーロッパバスを運行するDeutsche Touring http://www.deutsche-touring.com/、沿道のローカル観光局のホームページがリンクされ、ドイツに限らず街道巡りに便利なJALユーロエクスプレス、JTBマイバス、ビスターナ・ヨーロッパ号など日本語案内付の定期乗り合いバスも紹介されている。
メルヘン街道に関しては、ドイツ・メルヘン街道公式サイト「カッセル&グリム兄弟のメルヘンと世界を結合し」http://www.japan-kassel.com/という日本語サイトもあり、街道沿いのイベントガイドや「童話レストラン」、「古城ツアー」、「モデルコース」などを案内している。」
ゲーテ街道で思い出したが、文豪ゲーテはスイス、イタリアの観光振興に多大な貢献をしたお方でもある。以前渋谷にあり、現在、北区に移転した東京ゲーテ記念館でゲーテの旅行のルートマップを見せてもらったことがあるが、スイスのこんな奥地まで18世紀末によく旅したものだと感動した記憶がある。
 なにしろ、鉄道のない時代にユングフラウの麓のラオターブルンネンの滝まで出かけて詩に詠んでいるのだ。また、ゲーテの「スイス日記」を読んだイギリスのヴィクトリア女王ルツェルンからモントルーを旅し、そのルートが今“ゴールデン・パス”として知られる4つの鉄道を乗り継ぐ観光ルートとなったという。
イタリアのフィレンツェ郊外には「ピノキオ」の作者コッローディが生まれたコッローディ村があり、「ピノキオ」のテーマパークThe Park of Pinocchio http://www.pinocchio.it/old/uk/parco2.htmが開園している。
コッローディの墓参りをしたい人は、フィレンツェの中心からバスの13番路線に乗ってフィレンツェでのおすすめパノラマ・スポットであるミケランジェロの丘で下車し、サン・ミニアート教会へ登るとよい。教会裏の墓地に「ピノキオ」の作者コッローディの墓や、世界的デザイナーのエンリコ・コヴェルの白い大理石に薔薇色のストライプが美しい墓などがある。墓地の入り口には著名人の墓の位置が分かる地図が掲げてある。
 コッローディ財団のページCarlo Collodi National Foundation http://www.pinocchio.it/old/uk/homeuk.htmや映画『ピノッキオ』公式サイト http://www.love-italy.net/pinocchio/contents.htmlピノキオ・ファンには役立つだろう。
ところで、このゲーテが歩いた道筋をインターネットで調べることは可能だろうか。早速、Googleのイメージ検索でGoethe travel(独語でReise)と検索してみるとJohann Wolfgang Goethe Italienische Reise http://gutenberg.spiegel.de/goethe/italien/italien.htmというイタリア旅行のルートマップや、ちゃっかりとゲーテの足跡をツアーに仕立てているドイツの旅行会社のホームページReisen mit Goethe http://www.reisen-mit-goethe.de/html/reiseidee.htmといったページが見つかった。 これらはドイツ語のページだったが、Google英語版の5カ国語英訳機能(Language Tools)http://www.google.com/language_tools?hl=enを使えば英訳して見ることもできる。
Googleのイメージ検索とウェブ検索は、自分のテーマに従ったマイ街道を作るときにも役立つ。私個人の興味を例にとって恐縮だが、かねてから後期ロマン派の作曲家 Gustav Mahlerの足跡をたどる旅に出てみたいと思っていた。
Gustav Mahler Travelとイメージとウェブの両方でGoogle検索してみると、昔通りがかったことのあるマーラーが幼少期を過ごしたチェコのJihlava にあるHotel Gustav Mahler http://www.hotelgmahler.cz/ やInternational Gustav Mahler Society http://www.gustav-mahler.org/english/マーラーの足跡をクリッカブル・マップで見せるサイトまで見つかった。マーラーのファンは日本にも多いので「マーラー 旅」と検索してみると何と1,000以上のサイトがヒットした。
 皆さんも、自分だけの「ヘルマン・ヘッセ街道」や「フェリーニ映画街道」、「トスカーナ・ワイン街道」、「チョコレート街道」といったものをヴァーチャル世界でいったん作ってみて、いつか旅として実現してみてはいかがだろうか。
さて、「街道の旅」については、多くの人が日本語の旅行記をウェブ上で公開している。旅行記Google検索で見つけることができるが、ウェブ上で花盛りの海外旅行記を国別に分類・リンクした「旅人文庫 旅行記リンク集」http://homepage2.nifty.com/keny/index.htmという旅行記ポータルも活用してみてはいかがだろうか。旅行時期、行程、寸評を加えた一覧表から興味のある旅行記を選ぶことができる。各旅行記には天気や旅行関連本、地図(一部地域)へのリンクも設けられている。自転車・バイク旅行、ゴルフプレー旅行、サッカー観戦旅行など旅行形態別の分類もある。「マルチメディア」のコーナーには世界各地のライブカメラやストリーミング・ビデオ放送へのリンクもある。
 「ヨーロッパ アルプス 峠ドライブ・写真・絵本」http://www3.big.or.jp/~kitamura/という画像や地図が豊富なサイトもヨーロッパの街道の旅作りに大いに参考となるだろう。これは、独仏伊・スイス・オーストリアスロヴェニアにまたがるヨーロッパ・アルプスの峠の旅行者向けドライブ情報データベース・サイトだ。目下100の峠のうち71%を走破、データ掲載済みという。ドライブ情報ばかりでなく「ハンニバルと象の峠紀行」や「ナポレオンとアルプスの峠」などの街道に絡んだ歴史コラムや中欧チェコプラハポルトガルなどの情報も掲載している。「アルプスの花・動物」を始め多様なヨーロッパ旅行間連サイトへのリンクも張られている。
街道を実際に歩くルートで世界的に人気なのは、ロマンチック街道よりも、むしろ、世界遺産でもあるピレネー山脈からサンティアゴ・デ・コンポステラへ向う800kmに及ぶスペインの巡礼の道かもしれない。9世紀にサンティアゴで12使徒の1人聖ヤコブの遺体がみつかってからというもの、サンティアゴ・デ・コンポステラへ向うヨーロッパ各地からの巡礼者の群はひきもきらず、多いときには年間50万もの人たちが、同地めざして歩いたといわれる。
沿道にはアルベルゲと呼ばれる、自炊可能な巡礼宿が整備されており、馬や自転車での巡礼も認められているという。スペイン政府観光局のホームページにはモデルコースも掲載されている。ちなみに、和歌山県にある平安の昔から熊野三山への参詣者が列をなしたと言われる熊野古道サンティアゴ街道は98年10月に“姉妹道”として提携したそうだ。
スペインの巡礼の道以外にも、フランスのルルドポルトガルのファティマ、イタリアのアッシジ周辺など、ヨーロッパには歴史的な巡礼街道が多数存在する。Peter's Little Walk http://www.peterrobins.co.uk/camino/others.htmlのOther pilgrimage routesというホームページを見れば、各巡礼街道の関連ホームページへのリンクも見つかるだろう。
 また、街道全般に関してはEUROPEAN RAMBLERS ASSOCIATION http://www.era-ewv-ferp.org/index.php?sitemapのSite Mapから多数の関連サイトを訪問することができるはずだ。
 街道とは直接関係ないが、おとぎの国から飛び出したような美しい村が連合するという動きもある。日本でも「日本で最も美しい村」連合http://www.utsukushii-mura.jp/が誕生した。今のところ、美瑛町(北海道) / 赤井川村(北海道) / 大蔵村(山形県) / 白川村(岐阜県) / 大鹿村(長野県) / 上勝町(徳島県) / 南小国町(熊本県) / がメンバーである。
 これは、『フランスで最も美しい村』http://www.villagesweb.com/divers/selecbeaux.htmの活動に範をとり、失ったら二度と取り戻せない日本の農山村の景観・文化を守る活動をはじめたものだ。ヨーロッパにはベルギー「ワロン地方の最も美しい村」http://www.beauxvillages.be/やイタリアの組織I borghi più belli d'Italia http://www.borghitalia.it/index.phpなども活動しており、それぞれホームページを開いている。
 最後に個人的に応援したい箱根にあるテーマパーク「星の王子さまミュージアム」の公式ホームページ http://www.musee-lepetitprince.com/にもリンクを張っておこう。
 もうひとつ「きまぐれなモノローグ」http://plaza.rakuten.co.jp/yumenosuke/diary/2003-08-04/というブログサイトも紹介しておきたい。ここでは、圓朝の落語「死神」がリッチ兄弟作のオペラ「クリスピーノと代母」 (1850年イタリア初演)とグリム童話「死神の名付け親」に基づいていることが分かる。
☆右上の写真は デンマークコペンハーゲン市庁舎脇にあるアンデルセンの像