斜行エレベーターの部分運休と鍋冠山付近の観光開発

当欄「長崎の斜面地住まいをサポートするシステム」http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20170315でも取り上げた、斜行エレヴェーター(高低差50m、全長160m)と垂直エレヴェーター(高低差18m)を組み合わせた「グラバースカイロード」http://www.city.nagasaki.lg.jp/sumai/670000/678000/p001693.htmlの斜行エレヴェーター(右の写真)が5月8日より部分運休となっており、126段の階段を歩いて登らなくてはならない状態が続いている。一般の建物にすると5階の高さまで歩くことに相当する。

原因は、ケーブルの一部断線という。エレヴェーターを牽引するケーブルではなく、制御する電気系統のケーブルの断線とのこと。市当局は、「観光客の増加」を原因としているが、もともと運行回数に制限を設けていないし、制御系のケーブルであるから、理由にはならないだろう。ケーブルの交換は2日で済むとのことだが、ケーブルが特注品なので、休止は7月下旬まで続くという。

 ただでさえ、斜面地の住民は減少しているのに、このような不手際が続くと、減少に歯止めがかからないどころか、加速することになるだろう。
 国立社会保障・人口問題研究所の『日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)』によれば、2010年から2040年の長崎市の人口増減率はマイナス25.4%とのこと。443,766人の人口が331,191 に減ると予測されている。


一方で、長崎新聞5月24日の記事で“グラバー園周辺「大改造」” http://www.nagasaki-np.co.jp/news/kennaitopix/2017/05/24090323051385.shtml という記事があった。“グラバー園周辺により多くの観光客を呼び寄せようと、長崎大と米国・カリフォルニア大バークレー校の大学院生と学生らが、まちづくり案をデザインした。同園に近く、抜群の眺望を誇る鍋冠山にホテルを建設するなど、外国人の視点を大胆に取り入れ、歴史と景観を生かした「大改造」を提案している”というものだ。
提案には、「観光客の回遊拠点や休憩場所としてグラバー園周辺に3カ所の公園を新設」、「鍋冠山に500室規模のホテル建設」、「明治期の建造物『マリア園』をはじめ洋館をホテルやペンションに活用」、「グラバー園内に屋外劇場を新設ーなどが含まれている。

あくまで、提案に過ぎず、グラバー園周辺は開発規制があるので、実現には大きな壁があるようだが、実際に、鍋冠山の海側斜面などを開発しようという動きもあるようだ。

確かに、鍋冠山からの景色は素晴らしく、観光地としての魅力はもっと知られて良いと思うが、昨年完成した新展望台までは、道幅が狭く、パブリック・アクセスもなく、周辺の駐車場も限られていて、休日には周辺の住民が困るほどの交通渋滞が発生している。
 せっかくの展望台も、アクセス面をあまり考慮しないで計画されたようで、観光客へのアッピールも中途半端なものにならざるを得ないようだ。

 パブリック・アクセスの設定が難しいなら、「グラバースカイロード」を起点とし、南山手レストハウスグラバー園、マリア園、タイムボール跡地などを結びつけた徒歩観光ルートとしてのアッピールがあっても良いのではないかと思うのだが。


当欄関連過去記事:
「長崎のタイムボールについて」http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20160715
鍋冠山展望台リニューアル・オープン」http://d.hatena.ne.jp/Europedia/20160402


■今日のブックマーク&記事■

□2017/05/09付 西日本新聞朝刊記事「斜行エレヴェーター 部分運休」 https://www.nishinippon.co.jp/nnp/nagasaki/article/326877/

□トラベルボイス6月14日記事「タビナカ狙うレストラン予約大手「オープンテーブル」、その仕掛けから日本の展開までCEOに聞いてきた」https://www.travelvoice.jp/20170614-90335