旅の思い出を甦らせる「音のアルバム」

 旅の思い出を甦らせるものとしては、写真やビデオ、絵はがき、おみやげ、パンフレット類、地図などさまざまなアイテムがある。しかし、個人的には一番旅の思い出を鮮明によみがえらせてくれるのは、旅先で録音した生の音のような気がする。1974年に生まれて初めての海外旅行でヨーロッパを一周したとき、世界最初のポータブルカセット録音機といわれるアイワの録音機能付きラジカセを持って行った。どういうわけかカメラは持って行かなかったので生まれて初めての旅で残された“思い出”はこの生録音がすべてだ。ところが、自宅のステレオで再生すると、これが実に生々しく旅を思い出させてくれるのだ。以来、ヨーロッパ旅行のたびに小型の録音機とタイピン型のステレオ・マイクを持って行くようになった。
ヴェネチアでは運河を行くゴンドリエのカンツォーネを歌う喉があまりにも素晴らしいので、迷路のような道を追いかけて行き録音させてもらった。その場で聞き返してみるとこれがマイクの接触不良で見事に失敗。そのとき偶然にも高名な録音プロデューサー菅野沖彦氏がトレードマークのパイプをくゆらせながら近づいて来られてニヤリと笑われたという苦い思い出もある。
録音機も一時期はソニーウォークマン・タイプ・カセット録音機を使っていたが、今では、超小型のフラッシュメモリー録音機、ハードディスク録音機、ICレコーダーなど選択肢は多様で、大きさもタバコの箱より小さいものもある。たとえば、アイリバー社http://www.iriver.co.jp/product/H340は40GBのハードディスクを内蔵しており、外部マイクも付属している。さらに、海外のFM放送をキャッチできる「ワイドバンドFMチューナー(録音可)」まで付いていて、62 mm(幅) X 103 mm(高さ)X 25 mm(奥行)、重量 約203g というコンパクトさだ。
 意外と見逃されているようだが、動画が撮れるデジカメはそのほとんどが音声も録音できる。記録メディアの容量さえ十分なら動画とともに音を録りためてもいいだろう。
高音質の録音を求める人は、ソニーが1987年に商品化したDAT(デジタル・オーディオ・テープレコーダー)http://www.ecat.sony.co.jp/audio/walkman/cate01.cfm?B2=54&B3=295を野外録音で愛用していたようだ。残念ながらDATは今週で出荷を終了するようだ。
 その代わりに、SONYは内蔵フラッシュメモリー(4GB)やメモリースティック PRO デュオ(Hi-Speed) 1GB を記録媒体とする携帯型 リニアPCMレコーダー「PCM-D1」http://www.sony.jp/products/Consumer/linearpcm-rec/ を先月発売した。
 「鳥のさえずりや虫の音などの自然音や楽器演奏の高音質録音に最適な」デジタル・レコーダーで、「左右の音を広範囲にカバーし、自然なステレオイメージが伝わる音を集められる、変形X-Y型コンサーマイク」が附属し、「音楽CDよりも密度のある、豊かな音質で記録できるリニアPCM 96kHz 24ビット録音」ができるそうだ。仲間内の演奏会を生録音してCD化するときなどにも充分使えそうだ。ただし、値段も相当で Sony Style http://www.jp.sonystyle.com/Qnavi/Detail/PCM-D1.htmlでの販売価格は198,000円となっており、価格.com http://www.kakaku.com/で調べた最低価格でも173,974円となっていた。
ところで、上記「PCM-D1」の商品紹介ページを開いてみて驚いた、<スペシャルサイト>では、フラッシュなどをうまく使って実に上手に商品の魅力を伝えている。決して大量販売が見込める商品ではないのにここまでやるとは見事だ。ひるがえって、より高額な旅行商品の紹介サイトでこのような手法をとっているところがあるだろうか。