*[長崎日記]コロナウィルスとステイホームガーデン

*[長崎日記]コロナウィルスとステイホームガーデン

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庭の一本桜

 長崎市では、未だに市民の間で新型コロナウィルス感染者が見つかっていないため、繁華街の人出も目立って減っていなかったが、4月25日までに港外の香焼造船所に停泊中のクルーズ船コスタ・アトランティカ号の623人の乗組員から148人の感染者が見つかり、にわかに緊張感が出てきた。

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鍋冠山から遠望するコスタ・アトランティカ

 長崎は江戸時代に、日本で唯一世界に向けた窓であったことから、コレラ天然痘、重症の風邪など本来日本にはない外国からの感染症の流行の源となり、日本中に拡がっていった歴史がある。同時に、これら感染症の予防や治療のための西洋医学の最新技術も長崎から日本中に普及していった。
 1857年には、オランダ人医師長崎医学伝習所を開設し、それがやがて長崎医科大学そして現在の長崎大学へと変遷・発展の途をたどることになった。
 ポンペが創設した日本最初の西洋式病院である「小島養生所」http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/med/iko/の遺構の一部は保存され公開されている(新型コロナウィルスのため現在は閉鎖中)。

 今回のコスタ・アトランティカ号の乗組員の新型コロナウィルス検査も、長崎大学キヤノンメディカルシステムズ社と共同開発した「蛍光LAMP法」の遺伝子検査システムhttps://www.ccpid.nagasaki-u.ac.jp/20200319-2/を使い、わずか4日間で600人以上の検体検査をやり終えた。

 地方都市としては、医療技術が高く、病院などの施設も比較的充実していると実感している。私も、東京の有名病院での人間ドックで見逃された疾患を長崎の中規模病院での人間ドックで見つけ出してもらい、その場で医師が東京の病院に電話し、すぐに保存されていた当時の画像をネットで取り寄せ、疾患が東京在住時の画像にも写っていたことを見せてくれた。

 市民の信頼も篤い長崎の医療システムだがコスタ・アトランティカ号の乗組員のうち数人が市内の2つの病院に移送されてから、市中で新たな感染者が見つかったら、収用余力がどうなるかと危惧され始めている。


 カトリック長崎大司教https://www.nagasaki.catholic.jp/からの「お知らせ」によれば、政府による「緊急事態宣言」が解除されるまで公開ミサ(会衆を伴う)の挙行は中止され、司祭は会衆なしのミサをささげている。
 わが家に近い国宝の大浦天主堂https://nagasaki-oura-church.jp/キリシタン博物館も全面閉鎖されており、ふだんは観光客で賑わう周辺もひっそりと静まりかえっている。

 それで思い出すのは、拙著「フィレンツェ旅の雑学ノート」でも多くのペ-ジを割いて紹介したタベルナコロ(Tabernacolo)https://europedia.hatenablog.com/entry/20060602/p1と呼ばれる、聖母や聖人を描いた美しいほこらで、聖龕とも訳されるものだ。 色鮮やかなフレスコや彫刻、彩色陶器などで象られた聖母子などの像が置かれており、周囲では可憐な天使たちが舞っている。

 タベルナコロがフィレンツェや周辺の街で盛んに作られるようになった理由はふたつある。ひとつは、キリスト教の異端審問だ。庶民は異端に組みしていない証として辻々にマリアの絵を掲げるようになった。もうひとつの理由は、14世紀のペスト大流行だ。 

 人々は、感染の恐れがある教会のミサを避け、聖母マリアが病を癒すという信仰もあって街角のタベルナコロで祈りを捧げるようになった。やがて、タベルナコロの前に司祭が出張してきて礼拝も行われるようになり、祭壇状の台を設け、礼拝所としての機能を持つものも現れた。

 「フィレンツェ旅の雑学ノート」と言えば、その中でふれたイタリアのシエナ出身の母方のご先祖ルーツ探しで、新たな進展がありそうだ。当欄「異国からの訪問者とわが家のご先祖との不思議なご縁」https://europedia.hatenablog.com/entry/20160515/p1で紹介したスイスの“いとこ”が、コロナウィルス禍で在宅を強いられている間に、家系図などの文書を調べ直してみると、私の曾祖父の名前が姻戚として出てきたとのことだ。微妙に年齢などの齟齬があるので確実とは言えないが、現在お互いの資料を付き合わせ、他のイタリアの遠縁などにも追加資料を求めているところだ。

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フィレンツェのタベルナコロ



 さて、わが家の家庭菜園だが、芽かきと呼ばれる間引き作業を済ませ30cm以上の高さに育ったジャガイモや間引きを怠って密集状態の二十日大根などが元気に育っている。
 ベビーリーフやサニーレタス、サンチュ、サラダ・ミックス、水菜などの葉ものやバジル、ルッコラ、イタリアン・パセリ、ミントなどのハーブも収獲期を迎え、毎日の食卓を飾っている。

 垂れ桃の実は酒に、ジュンベリーや保存中の甘夏はジャムにする予定だ。

 新たに、胡瓜を2つの畝に植え付け、ネットも張り終わった。茄子の苗も植えつけを済ませた。さらに、4つほど畝を増やして、ゴーヤや島唐辛子、インゲン、そら豆、スナップえんどう、ズッキーニなども植え付ける予定だ。ただ、暖かくなると虫の駆除が大仕事になる。先週は、ハーブ類の種蒔きをした畝に小動物が出没したようで、溝を掘ったような跡があった。植木屋さんやご近所の話では、夜間にアナグマが出没しているらしい。野生の猿や猪、鹿も近所で目撃されているので、大いにあり得る話だ。取り敢えず対策として、ソーラーランプを設置しておいた。

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二十日大根(手前)とハーブガーデン

 

 これからは、旺盛になる雑草の刈り込みや芝生刈りの作業も欠かせなくなる。

 コロナ禍のせいで、レストランなどの需要が減っているためか、輸入ワインの値下がりが始まっているようだ。わが家もネット通販でストックを増やしている。ロビンソン・クルーソーラム酒樽を難破船からせっせと運び出し、ため込んでいる姿を思い出してしまった。

 ともあれ、“食糧増産”と友人たちからの魚介類や卵などの差し入れ、3日に1回行う家での米粉パン焼きなどと相まって、いざとなれば買い物に外出しなくても2ヶ月程度なら籠城できそうだ。

 菜園や庭での仕事も増えるので、当面は、“ステイホーム”ならぬ“ステイホームガーデン”がモットーとなりそうだ。

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□プレスリリース・ニュースリリース配信サービスのPR TIMES 4月22日記事
「世界の食料危機~食料不安は55カ国で1億3,500万人」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001508.000005176.html 


  isbn:490421384X:detail